埼玉県熊谷市というと夏の暑さは有名ですが、国宝に指定された貴重な建築物や伝統ある食文化があることはあまり知られていません。隣町で生まれ育った筆者も、その素晴らしさを知ったのは比較的最近のこと。そこにあるのが当たり前すぎて、気づいていなかったということもあります。
今回はその魅力を伝えるべく、熊谷市にある妻沼聖天山といなり寿司をご紹介します。
縁結びのパワースポット「妻沼聖天山」
妻沼聖天山は合併により熊谷市となった旧妻沼町にあるお寺で、地元では「聖天さま」と呼ばれ親しまれています。縁結びの霊験あらたかで、夫婦の縁をはじめ家内安全・商売繁盛・厄除け開運・交通安全・学業進学などのあらゆる良縁を結ぶといわれています。
奈良県の生駒聖天、東京の待乳山聖天と並ぶ日本三大聖天のひとつに数えられ、治承3年(1179年)平家物語にも登場する平安末期の武将「斎藤別当実盛」により創建。江戸時代初期の災火で消失しましたが、宝暦10年(1760年)に日光東照宮を彷彿させる美しい装飾建築として再建されました。
埼玉県内唯一の国宝建造物「歓喜院聖天堂」
江戸時代の再建より250年の時が過ぎ、傷みや彩色の剥落が目立つようになったため、平成15年(2003年)から「平成の大修理」が開始。7年の歳月をかけて当時の極彩色を取り戻しました。
平成24年(2012年)には本殿「歓喜院聖天堂」が埼玉県内唯一の国宝建造物に指定。多彩な彫刻技法と色漆塗や金箔押などを用いたきらびやかな装飾で、「埼玉の小日光」とも称されています。
聖天堂の建物は正面から拝殿、中殿、奥殿で構成されており、特に豪華な彫刻が施されているのが御本尊の「大聖歓喜天」を祀る奥殿です。
奥殿を間近で見るには拝観料(700円)が必要ですが、手の届くような距離から華麗さを存分に堪能できます。1時間置きにボラインティアガイドによる定刻ガイドがあるので、時間が合えば解説を聞きながら鑑賞するのがおすすめです。
妻沼聖天山はイベントに合わせての参拝がおすすめ
妻沼聖天山の彫刻は1年中見られますが、イベントに合わせて参拝すればより一層楽しめます。
妻沼聖天山の年中行事は次のとおりです。
- 1月1日 初詣
- 2月3日 節分 福男福女豆まき祭
- 3月第2土・日曜日 浴油万日講参拝
- 4月上旬 桜花見
- 4月18・19日 春季例大祭
- 7月第1土曜日 開基実盛忌
- 8月13日~15日 盆まつり
- 10月18・19日 秋季例大祭
- 11月1~15日 菊花大会
- 11月中 七五三祈願祭
- 12月22日 星祭・厄除祈願祭
- 12月31日 除夜の鐘
春と秋の例大祭では奉納すもう・剣道・柔道・弓道大会・稚児行列(春のみ)・火渡り(秋のみ)などがおこなわれ、大勢の人々で賑わいます。
また、境内にはソメイヨシノのほか冬桜、エドヒガン桜、河津桜、山桜などさまざまな桜の木が植えられているため、1月上旬から4月上旬までお花見が楽しめます。きらびやかな歓喜院聖天堂と桜の淡いピンクのコントラストは格別です。
文化庁100年フードに認定された「妻沼のいなり寿司」
聖天山と切っても切れない関係にあるのが妻沼のいなり寿司。2023年には文化庁100年フードに認定され、地域の食文化としても注目されています。
江戸時代、江戸で流行したいなり寿司が利根川の水運によって妻沼に伝わり、地元で豊富に採れる米や大豆を生かして作られるようになったのが妻沼のいなり寿司の始まりといわれています。
河岸で働く人々や妻沼聖天山の参拝者の人気を集めましたが、戦時中は販売中止に。戦後に販売を再開してからは、郷土の味として愛され続けています。
妻沼のいなり寿司の特徴は何といってもその長さで、一般的ないなり寿司の倍ほどもあります。これは、江戸時代に流行した長いいなり寿司がほかの地域では小ぶりになったのに対し、妻沼では長いまま引き継がれてきたためなのだとか。また、いなり寿司3本とかんぴょう巻き4つに真っ赤な紅しょうがを添えて1人前で販売しているのも特徴です。
妻沼のいなり寿司の名店①元祖「森川寿司」
妻沼のいなり寿司の専門店は3軒あり、そのうち最も長い歴史を持つのが「森川寿司」です。「歓喜院聖天堂」の建立と同時期の江戸中期に創業した茶屋「毛里川(もりかわ)」が前身で、現在の店主 堀越一章さんは9代目なのだとか。
店の前には車1~2台ほどの駐車スペースがあり、開店直後から地元と思われる方が次々と訪れていました。
昼には売り切れることが多いそうなので、早めの来店がおすすめです!
いなり寿司の長さは14cmほどあり、かなり満足感があります。しっかりとした甘めの味付けで、古くからの地元ファンが多いのだとか。
今回は入っていませんでしたが、油揚げが破れそうなものにかんぴょうが巻き付けてあることがあるそうです。
妻沼のいなり寿司の名店②明治時代の門前茶屋が発祥「小林寿司」
「小林寿司」は明治時代に門前茶屋として開業し、現在は聖天山から少し離れた場所に店を構えています。
熊谷と群馬県太田市をつなぐ県道341号沿いで駐車場も広く、車で立ち寄りやすいお店です。朝8:30から営業しているので、朝ごはんにも良いかもしれません。基本はテイクアウトですが、お願いすれば店内で食べることもできるそうです。
長さは13cmで森川寿司に比べるとやや小ぶりで、あっさり目の上品な味です。
写真では見えませんが、真ん中の1本には肉厚なかんぴょうが巻き付けてありました。
上が森川寿司、下が小林寿司。森川寿司の方が色や味が濃く、やや大き目です。店ごとに味の違いがあるため、地元の方はそれぞれひいきのお店があるのだとか。
妻沼のいなり寿司の名店③聖天山の参道沿いにある「聖天寿し」
妻沼のいなり寿司3店舗目は、戦後に創業した「聖天寿し」です。
聖天山の参道沿いにあるので、参拝帰りに立ち寄るのにおすすめです。専用駐車場はありませんが、聖天山の駐車場を利用できます。
残念ながら今回は定休日で購入できなかったのですが、甘めでジューシーな食感が特徴なのだとか。
月曜定休ですが、店頭に掲示されたカレンダーでは火曜日とほぼ隔週の水曜日も休みとなっていました。来店する際はご注意ください。
都内からアクセス良好!熊谷市の魅力を見つけに行こう
埼玉県熊谷市は観光地としてはあまり知られていませんが、国宝「歓喜院聖天堂」や100年フード「妻沼のいなり寿司」が楽しめる魅力的な街です。東京から車で1時間半で行けるので、日帰り旅行にもぴったり。江戸時代の文化を感じに、気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。
妻沼聖天山
- 住所:熊谷市妻沼1511
- TEL:048-588-1644(寺務所)
- 聖天堂拝観時間:平日10:00~15:00
- 土日祝日9:30~16:00
- 聖天堂拝観料:700円(同伴者がいる場合、中学生以下無料)
森川寿司
- 住所:熊谷市妻沼1523
- 電話:048-588-0075
- 営業時間:10:00〜 売切れ次第終了
- 定休日:月曜日
小林寿司
- 住所: 埼玉県熊谷市妻沼1243
- 電話:048-588-0029
- 営業時間:8:30〜 売切れ次第終了
- 定休日:月曜日
聖天寿し
- 住所:熊谷市妻沼1515
- 電話:048-588-0162
- 営業時間:8:30〜 売切れ次第終了
- 定休日:月曜日