精進料理とは?仏教の教えに基づいた肉と魚を使わない食事
精進料理というとなんだか難しい昔の料理のようですが、精進料理とは奈良時代から仏教の僧侶が食べていた食事のことで、肉と魚を使用しない料理のことです。現在の言い方で言うと、肉や魚以外の植物性食品のみで食べる食事です。仏教の教えでは、動物の殺生が禁じられているため、僧侶は動物の肉を食べることが禁じられています。
仏教の信仰の度合いや、地域差がありますが、日本では一般的に魚や肉を使わず、野菜・豆類など、植物性の食材を調理して作る料理のことを精進料理と呼びます。
精進料理によく使われる食材と禁止されている食材
精進料理は、肉や魚を使わない以外にも、仏教の考えに基づいた作法や決まりがあります。
代表的な精進料理の食材は大豆、こんにゃく、干し椎茸、レンコンなど
大豆は、精進料理の代表的な食材です。植物性タンパク質が豊富で、精進料理における重要な栄養源です。大豆は豆腐や、納豆、味噌、湯葉など多彩な食材に加工されています。
こんにゃくは、こんにゃく芋から作られる食材で、低カロリーで食物繊維が豊富なため、健康食としても注目されています。独特の弾力のある食感は、精進料理に欠かせない歯ごたえを与えてくれます。煮物や炒め物など、幅広い料理に活用されています。
干し椎茸は、旨味と香りが凝縮された食材です。だし汁を取ったり、煮物や炒め物に使ったりすることで、料理に深みを与えてくれます。また、戻し汁もだしとして活用でき、無駄なく食材を使い切ることができます。
レンコンは、食感も楽しめる食材です。穴の空いた形状から、「見通しが良い」縁起物として祝いの席でもよく使われます。煮物や揚げ物、きんぴらなど、様々な料理に活用されています。
「五葷(ごくん)」精進料理では香りが強い香辛料は使わない
精進料理では、にんにく、にら、ねぎ、らっきょうを使うことも禁じられています。これらの5つの食材に共通しているのは、強力な香りがあることです。私たちにとって食欲を呼び覚ますような強い香りは、煩悩を刺激して、修行の妨げになるものとして禁じられています。同様に香りが強いものとして、パクチーやハーブなども禁止されている地域もあります。
精進料理は旬の食材、地産地消が基本
精進料理の基本理念の一つに、「旬の食材」と「地産地消」があります。旬の食材は、栄養価が高く、味も香りも豊かです。また、地元で採れた食材を使うことで、その土地の農業に貢献することができます。
春には、菜の花やタケノコ、フキなど、山菜や野草が旬を迎えます。これらの食材は、天ぷらやおひたし、煮物などにして味わえます。夏には、トマトやキュウリ、ナスなど、みずみずしい野菜が豊富です。これらの野菜は、汁物や漬物などにして、夏の暑さを乗り切るのに役立ちます。
秋には、キノコやサツマイモ、リンゴなど、収穫の喜びを感じられる食材が旬を迎えます。冬には、白菜や大根、カブなど、根菜類が旬を迎えます。これらの野菜は、煮物や鍋物、漬物などにして、体の芯から温まります。
精進料理は「五味五色五法」を組み合わせることが大事
精進料理の調理法の基本は、「五味五色五法」です。これは、五つの基本的な味、五つの色、五つの調理法を組み合わせることで、栄養的にも、彩りや味も最適な料理になるという考えです。
五味とは、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「辛味」の五つの味つけのことです。これらの味をバランス良く組み合わせることで、料理に深みを与えることができます。
五色とは、陰陽五行思想に基づいた「白」「黄色」「赤」「青」「黒」の五色です。精進料理では、これらの色を食材の色や盛り付けによって表現します。例えば、青は青菜や海藻、黄はカボチャやレンコン、赤はトマトやパプリカ、白は豆腐や大根、黒はキノコや海苔などを使って表現します。
五法とは、「生」「煮る」「焼く」「揚げる」「蒸す」の五つの調理法のことです。
精進料理は濃い味付けをつけずに、素材の味を生かすのが理想です。この「五味五色五法」を上手に組み合わせることによって、料理の幅がひろがり、精進料理の奥深さを感じることができるようになります。
精進料理はヴィーガンと同じ?
精進料理とヴィーガンは、どちらも動物性食品を摂取しない食事です。しかし、起源や目的、食材、調理方法などに違いがあります。精進料理は、殺生を避け、心を清め、仏道修行に励むための食事ですが、ヴィーガンは動物愛護、環境保護、健康などを目的としたキリスト教の考えが基になっています。
精進料理は、季節の野菜、穀物、豆類、海藻類などを主に素材として利用しますが、五葷(ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、アサツキ)は使いません。ヴィーガンは肉、魚だけではなく、卵や乳製品など動物性食品全般を避ける考えもあります。
家庭で精進料理を作る 調理器具を選ぶ際のポイント
精進料理といっても、特別用意するようなものはないので、普段の料理と使う道具は変わりません。しいて言えば、繊細な素材の味わいを生かすために、木や竹など、自然素材のものを選ぶとよいでしょう。
- 菜切り包丁: 野菜を切るための包丁です。定期的に砥石で研いでおくと、野菜を細かく切ることができます。
- すり鉢・おろし金: 精進料理では、野菜や果物をすりおろすことが多いので、あると便利です。
- 木べら: 食材を混ぜたり、鍋返しをするための道具です。木製なので、鍋やフライパンを傷つけません。
- 蒸し器: 野菜や魚介類を蒸し、素材の味を生かした料理を作ることができます。
本格的な精進料理が味わえる都内のレストラン3選
1. 精進料理 醍醐
港区にある精進料理の名店、精進料理「醍醐」。都会の中心とは思えない、美しい日本庭園を楽しめるお座敷で、親しみ易い懐石形式の精進料理を楽しめます。伝統的な精進料理を現代風にアレンジしたコース料理を堪能できます。
2. 懐石・精進料理 泉竹
明治四年に京都で創業した「泉竹」に由来する、練馬区にある、季節の食材を使った精進料理を楽しめるお店です。各宗派ごとの本物の精進料理を提供するために、肉等を調理する時はすべての調理道具と器を別にしているというこだわりも。
3. shojin 宗胡
東京都港区六本木にある、ミシュラン二つ星を獲得した精進料理店です。野菜の味わいを最大限に引き出した、独創的な料理が楽しめます。
精進料理を楽しめる宿坊3選
精進料理は、仏教の教えに基づいた食生活であると同時に、日本の伝統的な食文化の一つです。宿坊に宿泊して、精進料理を味わうことで、より深く精進料理の世界を味わうことができます。
高野山にある金剛峯寺金堂の隣に位置する宿坊です。朝夕のお勤め参加、写経体験、座禅体験などのオプションも充実しています。
精進料理の特徴:
- 高野山で採れた旬の食材を使った精進料理
- 季節感あふれる盛り付け
- 山菜や豆腐など、高野山ならではの食材を使った料理
2. 京都 永平寺 雲水寮
京都にある曹洞宗の大本山永平寺の宿坊です。朝粥、昼食、夕食の3食、精進料理を味わえます。
精進料理の特徴:
- 一汁三菜の質素な精進料理
- 季節の野菜を使った素朴な味わい
- 食材の持ち味を生かした調理法
伊勢神宮内宮に隣接する神宮徴古館の宿泊施設です。朝食に精進料理を味わえます。
精進料理の特徴:
- 伊勢神宮に奉納される食材を使った精進料理
- 華やかで美しい盛り付け
- 海藻や魚介類を使った料理
※精進料理の内容や料金、予約方法などが変更になっていることもあります。詳細は各宿坊にお問い合わせください。