皆さんは食べ物を買うときに、食品表示ラベルの原材料表示を気にしていますか?
ご家族に食物アレルギーがある方は、気をつけてチェックしていらっしゃるかと思いますが、そうではない方はあまり気に留めていないかもしれません。
かくいう私も、子供たちに食物アレルギーがないのをいいことに、お恥ずかしながら数年前まで原材料は全くチェックせずに何でも買っていました。
ところが、豚やアルコール成分等を宗教上食べてはいけないとされているイスラム教徒の方向けのハラール料理の研究を始めてからというもの、手に取る食材の原材料をいちいちチェックするようになりました。
すると、今まで全く気付かなかった様々なことが目に入るようになり、食品の成り立ちと安全性、ひいては自分と家族の健康について深く考えるようになりました。
今回は、そんな私が常々疑問に思っていた醤油の原材料についてお話ししたいと思います。
醤油になぜ小麦が入っているのか?
いつも使っている普通の濃口醬油をある時改めて見たときに、私は醤油とは結びつかないイメージの原材料名を発見して驚きました。それが「小麦」です。
「あれ、醤油って大豆が原料だよね?しょっぱいから塩も入っているよね。で、小麦って何のために入っているの?」これが私の最初の疑問でした。ちなみに今思えば笑ってしまうのですが、小麦と聞いて、すっかり小麦粉の白い粉をイメージしてしまっていたのも勘違いの元でした。
この疑問は、醤油メーカーさんをお招きした醤油の勉強会で、他の参加者のお母さん達からも挙げられていたので、気になっている方も多いのかもしれません。
さて、なぜ小麦が入っているのか。その答えはズバリ発酵と関係があります。
醤油は発酵食品です。蒸した大豆と炒って細かく砕いた小麦に、種麹とよばれる麴菌を繁殖させてしょうゆ麹が作られます。そしてその麹菌は大豆や小麦のたんぱく質を旨味成分となるアミノ酸やペプチドに、小麦のでんぷんをブドウ糖に分解する酵素を作り出す役目を持っています。
この時、麹菌が出す酵素が働きやすくなるように、栄養源となる役割も小麦にはあります。味噌にも米や大麦が入っている米みそ・麦みそがありますが、これも大豆だけだとなかなか分解が進まないため、酵素の働きをよくするために入れられている面もあるのです。
実際普通の醤油の熟成期間が半年程なのに対し、小麦を使わないもしくは使っても少量だけのたまり醤油は、熟成期間が非常に長く2年から3年かけて出来上がります。米や大麦を使わない豆味噌(八丁味噌)の場合も同様です。
またブドウ糖は、乳酸菌と酵母によってアルコールや乳酸になり、しょうゆの味と香り成分に繋がっていくのです。なので、もし小麦が入っていなかったら、普段使っているような醤油の甘みや香りといったものは出来てこないことになります。小麦はやはり必要な原料なんですね。
なぜアルコールが入っている醤油と入っていない醤油があるのか?
これは私がハラール料理に取り組んでいるからこそ起きた疑問ですが、たくさんある醤油の食品表示ラベルを片っ端からチェックしていくと、結構な割合で原材料表示に「アルコール」と書かれた醤油がおかれています。特に減塩しょうゆなどの加工された醤油や、安い醤油には必ずと言っていいほど記載されています。
醬油はそもそも発酵過程でアルコールが自然に生成され、添加しなくても微量のアルコール分が含まれています。それについては特に記載をする必要はないのですが、わざわざ書かれている醤油はアルコールを後から添加したことを意味しています。
ある醤油メーカーの方によれば、保存料として品質維持のためにアルコールを添加しているとのことでしたが、他にも発酵がうまく進まずアルコール度数が下がってしまった出来の悪い醤油に、あとからアルコールを添加している側面もあるようです。
アルコールの添加が悪いということはありませんが、出来ればより自然に作られた醤油を使いたいと個人的には思います。
~その2に続く~