シニア食

介護食とは?|状態に合わせた種類や作るときのポイント、便利な市販品も紹介

介護食は栄養補給だけでなく、楽しみや生きがいを感じてもらうためにも重要です。安全とおいしさを両立できるよう工夫することで、噛む力や飲み込む力が低下した方でも無理なく食べられ、心身の健康維持につながります。この記事では、介護食の種類や高齢者食の違い、作る際のポイントを解説。便利な市販品も紹介しますので、食事介護にお役立てください。

介護食とは|簡単に言うとどんな食事?

介護食とは、噛む力や飲み込む力が低下した方でも安全に食べられるよう作られた食事です。噛む力や飲み込む力はそれぞれ異なるため、食材の大きさや形、硬さなどは一人ひとりの状態に応じて調整します。

通常の食事を食べにくくなると、食欲が低下したり食事内容が偏りがちになり、栄養不足につながりやすくなります。また、食べ物がうまく飲み込めず気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」により、肺炎を引き起こすこともあります。

食事は栄養を摂取するためだけでなく、楽しみや生きがいにもつながります。そこで、介護食には栄養や食べやすさだけでなく、食事を楽しんでもらえる工夫も求められます。

・介護食とは|高齢者食との違い

介護食は食べやすさや安全性の重視により見た目が損なわれ、食欲減退を招くこともあります。一方、高齢者食は食材の形を保ちつつ、より楽しみながら味わえるように調理されています。

例えば「あごの力が弱くなる」「唾液が減る」「味覚が低下する」など加齢による体の変化に合わせ、次のような工夫が施されています。

  • 噛み切りやすいよう包丁で切れ目が入れる
  • 食材を柔らかく煮る
  • 食欲をそそるよう香りや盛り付けを工夫する

通常の食事に手を加えるだけで高齢者食にアレンジできるため、家族と一緒に同じメニューを楽しむことも可能です。また、香りや彩り、盛り付けなどの工夫により食欲を刺激することで、栄養不足による筋力や免疫力、認知機能などの低下を防ぎ、介護予防にも役立ちます。

介護食とは|どんな種類がある?

介護食には、食べる人の噛む力や飲み込む力に応じた種類があります。

介護食の種類特徴
刻み食通常の食事を細かく刻んだもの
ソフト食食材を煮込んだりゆでたりして柔らかくしたもの
ミキサー食通常の食事をミキサーにかけ、ポタージュ状にしたもの
ゼリー食通常の食事をミキサーにかけてペースト状にし、ゼリー状に固めたもの

それぞれの特徴やメリット、どのような方に提供されるのかを見ていきましょう。

・刻み食は噛む力が弱くなった方向けの介護食

刻み食は通常の食事を細かく刻んだ介護食で、噛む力は低下しても飲み込む力がある方や、口が開きづらい方、歯の調子が悪い方などに提供されます。

刻む大きさは5~20mm程度で、食べる方の噛む力に合わせて柔軟に調節可能です。また、介護食の中でも食材の見た目や食感が比較的残っているため、食欲が湧きやすいのもメリットです。

・ソフト食は噛む力と飲み込む力が弱くなった方向けの介護食

ソフト食は、通常の食事より煮込んだりゆでたりする時間を長くすることで柔らかく加工した介護食です。「軟食」や「軟菜食」、「やわらか食」とも呼ばれ、舌や歯茎で潰せる程度の柔らかさが目安です。 

通常の食事に見た目が近いことから食欲が湧きやすく、あまり咀嚼しなくても飲み込みやすいのが特徴です。また口の中で食べ物がまとまりやすく、誤嚥のリスクが少ないのもメリットといえます。

・ミキサー食は噛む力がほとんどない方向けの介護食

ミキサー食は通常の食事をミキサーにかけてなめらかにした介護食で、刻み食でも飲み込みにくい方や口が開きにくい方に提供されます。ミキサーがあれば簡単に作れ、噛む必要がなく飲みこめて消化器官への負担も少ないため、家庭や介護施設、病院などで幅広く採用されています。

ただし、水分が多すぎると口の中でまとまらず誤嚥のリスクが高まるため、仕上がりの状態には注意が必要です。また、食材が原型をとどめないことから見た目が悪くなりやすく、食欲をそそるのが難しいというデメリットもあります。

・ゼリー食は嚥下機能が低下した方向けの介護食

ゼリー食は、ミキサー食をゼラチンや寒天、でんぷんなどでゼリー状に固めた介護食です。口の中でバラバラにならず、のどの滑りも良いため、嚥下機能が低下してミキサー食が飲み込みにくい方やむせやすい方に提供されます。

離水があると誤嚥の原因になり、弾力が強すぎると飲み込みにくくなるため、作る際は固さの調節が必要です。また、作るのに手間がかかるため、家庭で提供するのはハードルが高いといえます。

介護食を作るときのポイント

介護食を安全においしく味わってもらうためには、次のポイントが重要です。

  • その人に合わせた介護食にする
  • 飲み込みやすい工夫をする
  • 栄養バランスを考えたメニューにする
  • 塩分は控えめにする
  • おいしそうな見た目に仕上げる

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

・介護食を作るときのポイント①その人に合わせた介護食にする

介護食がその人に合っていないと、健康に影響を及ぼしたり、食べる楽しみを奪ってしまうこともあります。

例えば、例えば、嚥下機能が低下した方にミキサー食を提供すると、誤嚥のリスクが高まる可能性があります。また、刻み食が食べられる方にミキサー食を提供すると、食欲がわかず栄養が不足することがあります。

噛む力や飲み込む力は個人によって異なり、口の中の状態や加齢によっても変化します。ことため、日常的に観察し、どのような介護食なら無理なく食べられるのか見極めることが大切です。

・介護食を作るときのポイント②飲み込みやすい工夫をする

飲み込む力が弱くなると、サラサラした液体や水分の少ないパンやイモ類などでむせて誤嚥しやすくなります。このため、「とろみをつける」「細かく刻む」「ミキサーにかける」など、食材に合わせて工夫し、安全に食べやすく調理します。

・介護食を作るときのポイント③栄養バランスを考えたメニューにする

栄養バランスの取れた食事は筋肉や骨の維持を助け、体力の低下を遅らせるのに役立ちます。また、免疫機能の向上を助け、健康状態の維持にも貢献するため、タンパク質やビタミン、ミネラルなどをバランスよくとれるようメニューを考えます。

特にタンパク質は、筋肉や内臓など体の組織の材料として重要なだけでなく、体の機能を調整するうえでも欠かせません。食が細って充分にとるのが難しい場合は、料理に混ぜて使えるプロテインや市販の栄養食などで補うのもおすすめです。

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・介護食を作るときのポイント④塩分は控えめにする

 塩分の摂り過ぎは血圧を上昇させ、命に係わるさまざまな病気を引き起こしやすくなります。また、腎臓への負担も大きくなるため、介護食を作る際は減塩を心がけましょう。

ただし、単に塩分を減らすと味が薄くなり、食事の満足感が損なわれてしまいます。だしのうまみを活用する、素材の味を生かす、スパイスやハーブで香りをプラスするなど、薄味でも満足感が得られる味付けにすることが大切です。

・介護食を作るときのポイント⑤おいしそうな見た目に仕上げる

介護食は食べやすさや安全性を重視するため、もとの料理の形が失われていることもしばしばあります。何を食べているかわからないと食欲がわきにくく、食が細る原因になることもあります。

このため、ミキサー食は具材別にミキサーにかける、ゼリー食はもとの料理の形に近づけるよう成形する、料理の色が引き立つ食器を使うなど、おいしそうな見た目になるよう工夫が必要です。

市販の介護食を使えば介護負担が軽減できる

介護食には市販品もあり、上手に取り入れることで介護食づくりの負担を軽くできます。

市販の介護食は、大きく分けて3タイプあります。

  • 宅配弁当
  • レトルト
  • ゼリーやドリンク

それぞれの特徴を見ていきましょう。

・市販の介護食①宅配弁当は食事の準備が不要

介護用の宅配弁当は、調理やメニューを考える手間が不要で、介護食づくりの負担軽減に大きく役立ちます。また、栄養バランスや見た目も考えて作られているのもメリットです。

冷凍の商品が一般的で、数食分をまとめて受け取って冷凍庫で保管し、提供前に電子レンジで加熱します。また、食べる人に合わせて複数の柔らかさが用意されており、自宅で作るのが難しいムース食を取り扱っているケースもあります。

ただし、メニューが決められていて選べないことがあるため、好き嫌いの多い方には向いていません。また、自宅で作る場合に比べると割高なのもデメリットです。

・市販の介護食②レトルトは忙しいときやプラスワンにおすすめ

レトルトタイプの介護食は常温で長期保存可能なので、非常食や忙しいときだけ利用したいという方におすすめです。多くのメーカーから多彩なメニューが発売されており、噛む力や飲み込む力、味の好みに合わせて選べます。

おかゆにかけてどんぶりにしたり、具材をプラスするなどアレンジも可能です。また、スーパーやドラッグストア、通販などで1点から購入でき、気軽に試せるのも魅力です。

・市販の介護食③ゼリーやドリンクは手軽に栄養補給できる

食が細って食事だけで必要な栄養が補えないときは、ゼリーやドリンクタイプの栄養食品を取り入れるのがおすすめです。嚥下機能が低下した方でも飲み込みやすい固さやとろみに調整されており、食欲がないときでもおいしく食べられる味に仕上げてあります。

その人に合った介護食で安全と食べる楽しみを両立

食事を通じて心身ともに健康で幸せな時間を提供することが介護食の役割です。栄養や食べやすさだけでなくおいしさも重要で、香りや旨味、盛り付けなどを工夫することで、食欲が低下している方でも食事に積極的になり、生きることに前向きになるケースもあります。

しかし、自宅介護で毎日介護食を用意するのは時間も手間もかかります。介護負担軽減のため市販の介護食を活用するのもおすすめです。その人に合わせた介護食を提供し、いつまでも食べる楽しみを味わってもらいましょう。

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旅する食卓編集部
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