シニア食

【進化する宅配食市場】さらなる成長に向けての展望と課題

共働き世帯の増加、高齢化社会の進展、ライフスタイルの多様化…そんな現代社会を生き抜く私たちにとって、食事は大きな課題となりつつあります。そんな課題を解決する手段として注目を集めているのが、宅配食サービスです。かつては高齢者向けのサービスというイメージが強かった宅配食ですが、近年はサービス内容の進化が著しく、幅広い層から支持を集めています。この記事では、進化を続ける宅配食サービスの業界の拡大の要因について解説します。

コロナの巣ごもり需要を契機に市場規模はどんどんのびている

矢野経済研究所の調査によると、2022年の食品宅配市場規模は2兆8,985億円と推計されており、2017年の2兆2,283億円から約30%成長しています。食品宅配市場はコロナ禍での需要の高まりにより2020年度に市場が急拡大しました。今後も宅配食の市場規模は拡大し、2027年には29,074億円に達すると予測されています。

ベンチャー企業から大手食品メーカーまで続々参入

2023年度の宅配食品市場売上高上位5社は以下の通りです。

  1. ヨシケイグループ (866億円)
  2. ワタミ株式会社 (582億円)
  3. 日清オイリオグループ株式会社 (452億円)
  4. 株式会社オイシックス・ラ・大地 (421億円)
  5. 株式会社パルシステム (418億円)

最大手のヨシケイグループは14年連続売上首位を独走中

1975年の創業、最大手のヨシケイグループは、ミールキットのパイオニアとして長年トップシェアを維持しています。全国に65のFCと299の営業所があり、管理栄養士監修のミールキットを配送しています。長くサービスを続けているので、冷凍・冷蔵を同時に届けられる専用BOXや、鍵付きの専用宅配ボックスを無償で貸し出すといったサービスも充実しています。また、メニューのコースも11種類あり、予算や利用者のライフスタイルにあった食品を提供しています。

https://yoshikei-dvlp.co.jp/

ワタミは高齢者向けの宅配食サービスで高いシェア

居酒屋チェーンとして知られるワタミですが、近年では宅配食事業にも注力しており、そのサービスは高い評価を得ています。1食あたりの金額もリーズナブルで、電子レンジで温めるだけで食べられるメニューが多いので、調理の手間がかからないのが人気のポイントです。「ワタミの宅食」では毎日約24万食のお弁当・お惣菜を配送し、高齢者を中心に健康的な食生活を支えています。

https://www.watami-takushoku.co.jp/contents/top

それぞれ独自のサービスや強みで勝負

日清オイリオグループは、健康志向の顧客向けに、栄養バランスに優れた宅配食サービスを提供しています。株式会社オイシックス・ラ・大地は、有機野菜や無添加食材を使用した宅配食サービスで人気を集めています。株式会社パルシステムは、生協の宅配事業として、安全性と品質にこだわった商品を提供しています。これらの企業以外にも、様々な企業が宅配食品市場に参入しており、今後も市場は拡大していくと予想されています。

参考資料

  • 日本流通産業新聞: 2022年度版「食品宅配売上高ランキング」: URL 日本流通産業新聞 食品宅配売上高ランキング


2023年中に宅配食市場に参入した大手企業

2023年は特に、大手食品関連企業の進出が目立っています。従来の食品販売市場が飽和状態であり、競争が激化していることが背景にあると思われます。成長市場である宅配食市場への参入は、新たな収益源の確保につながります。

  • 伊藤忠食品株式会社: 2023年4月に、ミールキットサービス「Kit Oisix DELI」を立ち上げました。
  • イオン株式会社: 2023年5月に、高齢者向けの宅配食サービス「イオンの宅配食」を開始しました。
  • 株式会社セブン&アイ・ホールディングス: 2023年6月に、ミールキットサービス「セブンミールキット」を発売しました。
  • 株式会社ロッテホールディングス: 2023年7月に、健康志向の顧客向けの宅配食サービス「GO&FUN」を開始しました。
  • 日立ソリューションズ・クリエイト株式会社: 2023年10月に、AIを活用した宅配食サービス「AI宅配食」を立ち上げました。

宅配食を利用しているのは高齢者と共働き世帯が中心

宅配食サービスといえば、かつては高齢者向けのサービスというイメージが強かったのではないでしょうか。しかし近年、サービス内容の進化とともに利用者の層も大きく広がり、高齢者や共働き世帯以外にも、様々なライフスタイルの人々が利用するようになっています。農林水産省の調査によると、宅配食サービス利用者の約6割が共働き世帯であり、単身者も約2割を占めています。

高齢者向けの宅配食は塩分控えめで食べやすいものが人気

塩分控えめで、栄養バランスが考えられている宅配食が主流です。また、やわらかくて食べやすいことも重要です。個包装で使い勝手がよいサービス増えています。保存期間が長く、種類が豊富な冷凍弁当や、温めるだけで食べられるチルド弁当が人気です。

高齢者向け宅配食の選び方

  • 予算
  • 必要な栄養量
  • 食事形態(普通食、刻み食、ムース食など)
  • 味付け
  • 配達エリア

主な高齢者向け宅配食サービス

  • ワタミの宅食
  • まごころケア食
  • nosh
  • ベネッセのおうちごはん
  • 食宅配達サービスのヨシケイ

共働き世帯にはコスパだけではなく栄養管理の面でも支持されている

忙しい共働き世帯にとって、宅配食は時間と心の余裕を生み出す救世主です。子育て中の世帯も多いので、子ども用のミールキットも人気です。また、自分の家族だけではなく、高齢の親の食事の世話をしているケースもあります。インターネットで注文ができない親世代のために、宅配食を依頼している人も多いようです。

具体的には、以下の点が共働き世帯に選ばれる理由として挙げられます。

1. 時間の節約

共働き世帯にとって、最大のメリットは時間節約です。買い物や調理にかかる時間を大幅に削減でき、仕事や家事、育児など、他のことに時間を有効活用できます。

2. 栄養バランスの改善

仕事や家事に追われる共働き世帯は、自炊で栄養バランスの良い食事を摂るのが難しい場合があります。宅配食は、栄養士監修のメニューが豊富で、手軽に栄養バランスの良い食事を摂ることができます。

3. 食材の買い出し・持ち運びの手間削減

食材の買い出しや持ち運びは、共働き世帯にとって負担となります。宅配食は、自宅まで配達してくれるので、これらの手間を省くことができます。

4. メニューのマンネリ化防止

自炊だと、どうしてもメニューがマンネリ化しがちです。宅配食は、様々な種類のメニューがあるので、飽きずに食事を楽しむことができます。

5. コストパフォーマンス

外食やコンビニ弁当に比べ、宅配食はコストパフォーマンスが良い場合があります。

6. 家族の健康管理

共働き世帯は、家族の健康管理に時間を割くのが難しい場合があります。宅配食は、家族の健康をサポートしてくれる安心のサービスです。

共働き世帯に急拡大!ミールキット

ミールキットとは、一食分の食材・調味料さらにはレシピなどを一式のセットとした、調理を簡便化するキットです。 料理は作るだけではなく、買い出しにいったり、材料をそろえたり、下ごしらえをしたりという手間がかかります。ミールキットがあると、必要な食材が必要な分だけ届くので、調理にかかる時間は短縮できます。また、最後は自分のキッチンで調理をするので、届いたお弁当をそのまま食卓に並べるという味気無さはありません。

共働き世帯の増加を背景に、国内のミールキット市場は順調に成長していて、 2021年度には1600億円の市場規模が、3年後には1900億円に達すると見込まれています。

私たちの食事が変わる?どんな影響がある?

宅配食が増加している現状と要因について説明してきました。今後さらに宅配食を選ぶ人が増えること、私たちの食生活やライフスタイルにどのような影響があるのでしょうか。

【社会への影響】宅配食の広がりで在宅介護の負担が軽減される可能性

超高齢化社会といわれる日本で、今後さらに高齢者の在宅医療・介護が増えてくるといわれています。家族介護をしている人にとって、宅配食は介護の負担を大きく軽減する可能性があります。また、高齢者にとっても、栄養バランスの良い宅配食を簡単に摂ることができるため、外出や活動の機会が増え、社会参加を促進する可能性があります。

【環境への影響】食品ロス削減につながる一方で容器のゴミ問題も

宅配食が増えることのプラスの面としては、外食やコンビニ弁当に比べて容器や包装が少なく、食品ロスも削減できる可能性があることです。ただし、マイナスの面として、配達によるCO2排出量や、容器や包装の処理問題が挙げられます。

宅配食サービスを利用する際には、環境に配慮した取り組みを行っている事業者を選ぶことが重要です。また、消費者自身も、マイバッグを持参するなど、環境負荷を減らす意識を持つことが大切です。

【個人への影響】

忙しくて、どうしても食事への配慮が後回しになってしまう人にとって宅配食は、栄養バランスの良い食事を簡単に摂ることができるため、食生活の改善につながる可能性があります。また、宅配食を利用することで、調理や買い物にかかる時間を節約することができ、時間的な余裕が生まれます。災害発生時に自宅で過ごす場合、備蓄食として役立つという面もあります。

ただし、宅配食は、外食やコンビニ弁当よりも高価な場合が多いのがデメリットです。

【まとめ】宅配食を上手に活用して食生活を豊かに

宅配食市場は、共働き世帯や高齢者を中心に利用が拡大しており、今後も成長が見込まれています。時間や手間を省け、栄養バランスの良い食事を摂れるなど、消費者の生活を豊かにしてくれる存在です。今後は、さらにサービス内容やメニューが充実し、より多くの消費者が利用しやすくなるでしょう。

消費者は、自分のライフスタイルやニーズに合ったサービスを選び、上手に活用することで、より快適で健康的な生活を送ることができます。自分に合った宅配食を見つけて、上手に活用することで、食生活を改善し、生活の質を向上させましょう。

参考資料

  • 矢野経済研究所: 2023年 宅配食市場調査報告書
  • 農林水産省: 令和3年度 農林水産省食料需給調査
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旅する食卓編集部
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