介護食は食べる人の噛む力や飲み込む力に合うものを提供する必要があるため、形状別に複数の種類があります。また、市販の介護食の多くは「ユニバーサルデザインフード」や「スマイルケア食」などの区分が表示されており、選ぶ際の目安になります。
今回は、介護食の種類を形態別や区分別に解説します。市販の介護食の種類も紹介しますので、介護食選びにお役立てください。
【形態別】介護食の種類
自宅や介護施設などで調理する介護食は、食事の形状により次の4種類に分けられます。
介護食の種類 | 食事の形状 |
刻み食 | 通常の食事を細かく刻んだもの |
ソフト食 | 食材を煮込んだりゆでたりして柔らかくしたもの |
ミキサー食 | 通常の食事をミキサーにかけ、ペースト状にしたもの |
ゼリー食 | 通常の食事をミキサーにかけてペースト状にし、ゼリー状に固めたもの |
それぞれの特徴や調理方法などを見ていきましょう。
刻み食は通常の食事を刻んで提供
刻み食とは、通常の食事を細かく刻んだ介護食です。ほかの種類の介護食に比べると誤嚥のリスクは高いため、噛む力は低下しても飲み込む力がある方に向いています。また、口が開きづらい方や歯の調子が悪い方などにも提供されます。
刻む大きさは5~20mm程度で、食べる方の噛む力に合わせて調節します。また、介護食の中では比較的食材の見た目や食感が感じられるため、食欲がわきやすい形状です。ほかの家族と同じ料理を流用でき、特別な道具が不要など、作りやすい点もメリットといえます。
ソフト食は煮込み時間を長くするなど柔らかく調理して提供
ソフト食は通常の食事より柔らかく仕上げた介護食で、「軟食」や「軟菜食」、「やわらか食」などとも呼ばれます。一般家庭では煮込み時間を長くしたり圧力鍋を用いて調理しますが、市販品や業務用には酵素や凍結など独自の方法で柔らかく仕上げたものもあります。
舌や歯茎で潰せる程度の柔らかさが目安で、あまり咀嚼しなくても飲み込みやすいことから、噛む力と飲み込む力が弱くなった方に提供されます。また、通常の食事に見た目が近く食欲がわきやすい、口の中で食べ物がまとまりやすく誤嚥のリスクが少ない、といったメリットがあります。
ミキサー食は通常の食事をミキサーにかけて提供
ミキサー食は、通常の食事をミキサーにかけてなめらかなペースト状にした介護食です。ミキサーがあれば簡単に作れるため、家庭や介護施設、病院などで広く採用されています。噛まずに飲み込めて胃腸への負担も少ないため、刻み食でも食べにくい方や口が開きにくい方、消化機能が低下した方などに提供されます。
なめらかに仕上げるために一定量の水分が必要ですが、多すぎると誤嚥の原因になったり、味が薄まりおいしく味わえない、かさが増えることで食べきれず必要な栄養を摂取できない、などの問題が生じる可能性があるため、仕上がりの状態には注意が必要です。
ゼリー食はペースト状にした食材を固めて提供
ゼリー食は、ミキサーでペースト状にした食事をゼラチンや寒天、でんぷんなどでゼリー状に固めたものです。噛まずに食べられてのどの滑りも良いため、嚥下機能が低下したむせやすい方に提供されます。
弾力が強すぎると飲み込みにくく、離水があると誤嚥の原因になるため、作る際はかたさの調節が必要です。また、作るに手間がかかるため、主に介護施設など複数人の食事をまとめて作る現場で採用されています。
【区分別】介護食の種類
介護食は食事の形状だけでなく、食べる人に合った商品を選べるよう噛む力や飲み込む力に応じた区分でも種類分けできます。
介護食の区分は複数ありますが、ここでは多くの食品会社で採用されている日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード」と農林水産省の「スマイルケア食」を紹介します。
ユニバーサルデザインフードはかたさや飲み込みやすさで4種類に区分
出典:ユニバーサルデザインフードとは|日本介護食品協議会について
「ユニバーサルデザインフード」は複数の食品メーカーにより設立された日本介護食品協議会が作成した⾃主規格です。この規格ではかたさの目安を「区分1:容易にかめる」「区分2:歯ぐきでつぶせる」「区分3:舌でつぶせる」「区分4:かまなくてよい」の4つの区分に分類します。
介護食を製造する多くのメーカーが日本介護食品協議会に加盟しており、規格に基づいて製造し、商品パッケージにロゴマークと区分を表示しています。このため、ユニバーサルデザインフードは市販品選びの指標として非常に有効です。
スマイルケア食は食品の特徴を3色のマークで表示
介護食品の民間規格はユニバーサルデザインフード以外にも複数あり、消費者にとって分かりにくい状態でした。そこで、農林水産省が中心となって既存の⺠間規格を統⼀的に分類し、「スマイルケア食」として新しい枠組みを整備しました。
スマイルケア食では、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に青マーク、噛むことが難しい人向けの食品に黄マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に赤マーク表示します。さらに黄マークは②~⑤、赤マークは⓪~②に区分けし、食べる人の状態に合った商品を選びやすい表示になっています。
噛むこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品 | スマイルケア食 |
容易にかめる食品(例:焼き豆腐) | スマイルケア食 黄⑤ |
歯ぐきでつぶせる食品(例:もめん豆腐) | スマイルケア食 黄④ |
舌でつぶせる食品(例:きぬごし豆腐) | スマイルケア食 黄③ |
かまなくてよい食品(例:つぶのあるペースト食) | スマイルケア食 黄② |
少しそしゃくして飲み込める性状のもの(例:まとまりの良いおかゆ) | スマイルケア食 赤② |
⼝の中で少しつぶして飲み込める性状のもの (例:ゼリー・プリン・ムース) | スマイルケア食 赤① |
そのまま飲み込める性状のもの (例:均質なゼリー飲料) | スマイルケア食 赤⓪ |
表はスマイルケアの選び方を元に作成
なお、ユニバーサルデザインフードとスマイルケア食の区分は次のように対応します。
ユニバーサルデザインフード | スマイルケア食 |
区分1(容易に噛める) | 黄⑤ |
区分2(歯茎でつぶせる) | 黄④ |
区分3(舌でつぶせる) | 黄③ |
区分4(噛まなくてもよい) | 黄②、赤②、赤①、赤⓪ |
ユニバーサルデザインフードの区分4(噛まなくてもよい)は、スマイルケア食では食品の状態により細かく分類されています。
現時点ではスマイルケア食は新しい規格であり、表示されている食品はまだまだ少ないです。しかし、今後普及が進むことで、飲み込む力が落ちた方向けの商品をより選びやすくなるのではないでしょうか。
市販の介護食にはどんな種類がある?
自宅で過ごす高齢者数が増えているなかで、市販の介護食もバラエティー豊かに進化しています。多くの商品はユニバーサルデザインフードなどの表示があり、食べる人の状態に合わせて選べます。
ここでは、購入しやすい「レトルトタイプ」「弁当タイプ」「ゼリーやドリンク」の3つのタイプについてご紹介します。
市販の介護食の種類①レトルトタイプ
レトルトタイプはスーパーやドラッグストア、ECサイトなどで1点から購入でき、手軽に取り入れやすい介護食です。多くのメーカーから発売されており、食べる人の噛む力や飲み込む力、味の好みなどに合わせて多彩なメニューの中から選べます。
常温で長期保存可能で、お湯や電子レンジで温めるだけで提供できるため、忙しいときだけ利用したい方や非常食にもおすすめです。
市販の介護食の種類②弁当タイプ
弁当タイプの介護食は、介護食宅配サービスのほかECサイトでも購入できます。使い捨ての容器に複数のおかずが盛り付けてあるのが一般的で、献立づくりや調理など介護食づくりにまつわる手間を大幅に削減できます。
常温・冷蔵・冷凍の商品がありますが、常温と冷蔵を取り扱っているのは一部の介護食宅配サービスに限定されます。主流は冷凍タイプで、数食分をまとめて受け取って冷凍庫で保管し、電子レンジであたためて提供します。
味や栄養はもちろん見た目もこだわっていて作られているほか、「やわらか食」や「ムース食」など複数の柔らかさが用意されていることも多いです。また、介護食宅配サービスでは定期便が利用できる場合も多く、注文の手間も省けます。
市販の介護食の種類③ゼリーやドリンク
ゼリーやドリンクタイプの介護食は、スーパーやドラッグストア、ECサイトなどで購入できます。常温保存可能で食欲が落ちたときでも食べやすい味に仕上げられていて、介護施設や病院などでも広く利用されています。
飲み込みやすく誤嚥しにくい粘度に調節されており、嚥下機能が低下した方の食事用のほか、食が細り食事だけで十分に栄養をとれない方の副食用としてもおすすめです。
介護食の種類は食べる人の噛む力や飲み込む力に合わせて選ぼう
介護食には、大きく分けて刻み食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の4種類があります。また、市販の介護食の多くはユニバーサルデザインフードやスマイルケア食などの区分が表示されており、選ぶ際の指標となります。
介護食の種類選びは、安全に食事を楽しんでもらうために重要です。選び方がわからないときは医師や管理栄養士などに相談してみましょう。