和食の基本調味料のひとつである醤油は、私達の食卓になくてはならないものです。でもその醤油、どうやって作られているかご存知ですか?
今回は一般的に醤油がどのように出来るのかを、分かりやすくご紹介します。
ステップ1「麹(こうじ)」
醤油作りでもっとも大切な工程が、しょうゆ麹づくりです。ここで失敗すると、美味しい醤油は出来ません。
まず原料となる大豆を高温高圧で蒸します。これはタンパク質を変性させて、のちに麹菌を付けたときに麴菌が働きやすくするためです。またもう1つの原料となる小麦は、高温で炒ってローラーで細かく砕きます。これは炒ることで小麦のデンプンがアルファ化し、割砕することで表面積を増やして、麹菌が働きやすくするためです。
この蒸した大豆と炒って砕いた小麦を混ぜ合わせたところに種麹とよばれる麹菌を加え、約3日間かけて麹菌を成育させます。今では機械で管理できるようになった麹の成育ですが、メーカーによっては麹室(こうじむろ)と呼ばれる部屋に室番(むろばん)を置き、職人が夜も数時間おきに麹の繁殖状況を確認するそうです。このように最適な温度と湿度を保つよう細心の注意を払いながら、しょうゆ麹が完成します。
ステップ2「櫂(かい)」
しょうゆ麹が出来たら、いよいよ仕込みです。しょうゆ麹に食塩水を加えた「もろみ」を、発酵タンクに移します。この時点で麹菌の繁殖は止まり、かわりに麴菌が生み出した酵素が働きはじめ、発酵が始まるのです。
タンクの中では酵素や微生物たちの働きによって、もろみがじっくりと発酵・熟成されます。まず大豆のたんぱく質がアミノ酸に、小麦デンプンが糖分に分解されます。やがてもろみは赤みを帯びてプツプツと発酵し、旨味を引き立てるアルコールや、香りが立ってきます。
発酵期間中は時折攪拌してもろみに空気を送り込むのですが、昔はその作業に大きな木の棒が使われていました。それが船を漕いでいるような様子だったことから、この作業工程を「櫂(かい)」とも呼びます。
数か月経ち、醤油の色・味・香りが十分整ったら、いよいよ圧搾作業です。熟成されたもろみを布に包み、圧搾機にかけてゆっくりと絞ると、搾りたての生しょうゆが出てきます。この絞り出された液を、「生揚げしょうゆ(生醤油)」と呼び、美しく澄んだ赤色とサラリとした口当たりが特徴です。
ステップ3「火入(ひいれ)」
さて、ここから「火入」と呼ばれる加熱処理が施されます。高温で短時間加熱することで、醤油の色と香りを整え、酵素の働きを失わせると同時に殺菌します。
その後タンクで清澄させて、たんぱくオリを沈降させるなどして休ませた醤油を、濾過機に通すことで、色鮮やかな醤油が出来上がるのです。
なお、最近は火入をせずに特殊な機械で濾過・殺菌をした「生しょうゆ」もスーパーで売られています。味は火入したものよりもサラリとしています。機会があれば、なめ比べてみてください。
出来上がった醤油は、色・味・香りを調べる官能検査を必ず受け、合格しなければなりません。醤油はJIS規格によって5つの種類に分類されており、旨味成分の指標である窒素分、色の濃さ、淡さなどが数値で決められているのです。また香りの成分は実に300種類程含まれていると言われています。
検査に合格した醤油は瓶やペットボトルに充填され、ラベルを貼って出荷されます。ちなみにペットボトルよりも瓶に詰められた醤油の方が、酸素の透過率が低く、保存期間が長く設定されます。
普段何気なく使っている醤油も、長い年月といくつもの工程を経て、ようやく出来上がるんですね。これを機会に醤油1滴1滴を大切にしていけるといいかと思います。