今回紹介するのはさつま芋。といっても、ただのさつま芋ではありません。翠の王様と書いて、「すいおう」と呼ぶその名前からもわかるように、主役となるのは、緑色をした葉と茎。かねてから栄養価の高さが注目されていたさつま芋の葉、茎、葉柄の部分を食べやすく改良した品種です。ハートを逆さにしたようなかわいらしい姿もさることながら、やはり注目したいのは栄養価。緑黄色野菜の王様と言われる「ケール」に匹敵する豊富な栄養をもつ野菜なんです。
さつまいもの茎は、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富
里芋の葉柄である「ずいき」や「芋がら」は、乾燥させ保存食として活用するなど、古くから食べられてきたものです。さつま芋の葉や葉柄も、「芋づる」として、食べられることもありましたが、えぐみや青臭さがあるため、食材としては敬遠される傾向にありました。一方でさつまいもの茎や葉は、たんぱく質、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維が豊富で健康によいことも知られていました。
その豊富な栄養価に着目した九州沖縄農業研究センターにより開発されたのが「すいおう」です。茎葉部分の食味に重点を置き、約6年の月日をかけ研究を進めた結果生まれたものです。
坂戸ブランド野菜」として認定し、特産化
さつまいもは地域を問わず全国で栽培されていますが、中でも力を入れているのが埼玉県坂戸市。同市では、健康とおいしさを兼ね備えた野菜を「坂戸ブランド野菜」として認定し、特産化を進めており、「すいおう」もその一つに位置付けられています。「すいおう」は市内の学校給食に取り入れているほか、特産化も推進。ドライ粉末にした製品を発売しているほか、甘味が少なく食用に適さないとされてきた芋の部分についても、「芋焼酎」として製品化しています。
抗酸化、美白効果に期待
「すいおう」の栄養価が高いと言われても、なかなかイメージしづらいものですよね。では、ケールに匹敵する栄養価といったらどうでしょう?
青汁の材料であり、「緑黄食野菜の王様」と言われるのがケールです。日本食品分析センターの調査結果では、食物繊維、鉄、カルシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンK、マグネシウムのうち、マグネシウムとカルシウムを除く5つの成分でケールを上回るとされています。ケールより劣っているとされたカルシウムやマグネシウムについても、「すいおう」が含むカルシウムはほうれん草の約2.8倍、マグネシウムは小松菜の約3倍含まれているという結果がでています。
また「すいおう」はポリフェノール、ルテインといった生体のバランスを維持するために必要な機能を持つ成分が多いのも特徴で、メラニンの生成抑制や、骨密度の低下を抑える、抗酸化を期待できることが、論文や動物実験の結果として示されています。
さつまいもの茎や葉は揚げてよし、炒めてよし
さつまいもの茎はしゃきしゃきと歯切れよく、葉は加熱するととろりとした粘りがでます。つるむらさきやモロヘイヤのように強い粘りではなく、噛んでいくと少しとろみがでるといったもの。くせはなく、ほのかな甘みも感じます。豊富な栄養をあますことなく食べたいのなら、炒める、揚げるといった調理法がおすすめです。
水を使わず、加熱時間が短くすむため、ビタミンの損失を抑制できるほか、ビタミンKなどの脂溶性ビタミンは油と一緒に食べることで吸収されやすくなるためです。葉は天ぷらやかき揚げでさくっと、茎はさっと炒めきんぴらにするのがおすすめです。茎、葉柄の部分はふきのように皮をむいてから使うと、よりしゃきしゃきとした食感を楽しめます。