冷たいうどんがおいしい季節になりました。食欲がなくなりがちなこの季節も、冷たい麺類なら食べられるという方も多いでしょう。素麺よりは太く、他のうどんよりは細い稲庭うどん。「稲庭うどん」という名は知っているけど食べたことがないという方、ぜひこの夏は稲庭うどんを試してみませんか?
変わらぬ本物の味、300有余年の歴史を持つ「稲庭うどん」
稲庭干饂飩(ほしうどん)の原型が稲庭に伝わり、稲庭(佐藤)吉左エ門によって技術が受け継がれ、その後研究と改良が重ねられ現在の製法が生み出されたのが寛文五年(1665年)と言われています。
稲庭うどんはほどよい太さがあり、まっ白というよりは少し黄色がかった色の乾麺になっています。。食用植物油を使わずにでん粉が打ち粉として使われ、乾燥させる前につぶす平たい形状が特徴になっています。
以前ご紹介した「白石温麺」の技術が稲庭うどんに伝わったという説もある通り、「白石温麺」によく似た形状の麺になっています。ですが、白石温麺のように短くはありません。
写真の「稲庭うどん」は切り落としタイプのため短めの15〜16cmほどですが、通常のものは30cm程度の長さになっています。
三日かかる全ての工程は、現在も職人による手作業で行われます
佐藤養助商店の「稲庭うどん」は、今でも完全なる手作業で作られています。150年以上に渡り子から孫へと代々伝えられ守り続けてきた伝統の技によって、素晴らしくつるっとした極上の食感の麺になるのです。
1日目、まず特製専用粉に塩水を加えて、団子状にまとめていきます。ここで入れる塩水の量は職人の長年の勘によって調整されています。熟成させては練り返す、これを繰り返して生地を熟成させていきます。その後、生地をのして約3cm幅に切ります。転がしながら角を取って、輪状に巻きながらたらいに入れてさらに熟成させます。
2日目、小巻きにして熟成させていた生地を両手でよりながら、2本の棒に交差するようにあやがけしていきます。生地をかけた2本の棒をまとめて木箱に吊るすようにかけ、熟成させます。その後生地をつぶして平たくしたら、再び熟成させます。うどんを桁(けた)にかけて、手でさすりながら約120cm程に延ばします。そして補助乾燥に入ります。
3日目、うどんの中までしっかりと乾燥するよう状態を見ながら一昼夜乾燥させます。その後うどんを裁断し、一本一本丁寧に確認して一定の太さに取り揃えます。その後品質検査や方向梱包され出荷されます。
ぴんとまっすぐな「稲庭うどん」だけでなく、桁にかかっていた曲がった部分の「ふし」や、「かんざし」と呼ばれる部分も販売されていたり、無料でいただけたりもします。味に変わりはなく、お味噌汁の具にしたりパスタのようにして食べたりして楽しめます。
つやつやと光る美しさ、つるつるとした食感の佐藤養助「稲庭うどん」
「稲庭うどん」を初めて見たとき、そのつやつやと光る美しい麺に驚きました。しかもこれが乾麺なことを知ってさらにびっくり。これまで乾麺に持っていたイメージが180度変わりました。
「稲庭うどん」は大きめの鍋で、たっぷりのお湯で茹でます。箸で静かにほぐしながら茹で、約3分ほど茹でます。麺が半透明に透き通ってきたら最高の状態です。これは冷たくして食べる場合で、温かいうどんの場合はもう少し早めにざるにあげましょう。
ざるにあげたうどんを、冷水でしっかりと水洗いしてぬめりを取ります。美味しく食べる最大のポイントは、氷水でしっかりと引き締めること。冷たいうどんだけでなく、温かいうどんの場合も氷水でしっかり締めます。引き締めた後で、熱湯をかけ温かいつゆに入れるようにしましょう。
冷たいのも温かいのも美味しい「稲庭うどん」。昆布・しいたけ・かつお節などはもちろん、カレーやトマトなどにもよく合います。食欲をかき立てるお好みのだしで「稲庭うどん」をぜひどうぞ。
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