食べ比べ

厚い油揚げを4種類食べ比べ!あなたは栃尾油揚げ派?それとも…。

かりっ、ふわっ、じゅわー。焼き上げたときのあの香り、口に入れたときに広がる旨み。ただ焼いただけなのに、おいしくて、我が家の冷蔵庫に欠かすことのできないものが油揚げです。それも、栃尾の油揚げのように分厚いものです。いろんな地域の油揚げを食べたくて、今回試してみました。厚い油揚げの食べ比べ。

厚揚げと厚い油揚げの違いとは?

食べ比べに入る前に、まずは油揚げの定義から。

外見だけをみると、厚い油揚げと厚揚げの違いってわからなくなりませんか?豆腐から作るなら同じでは、と思ってしまいますが、油揚げと厚揚げでは作り方が大きく異なります。

料理家であり、池波正太郎原作のテレビドラマ「鬼平犯科帳」の料理指導を務めた阿部孤柳氏らの著作「とうふの本」では、油揚げについて「木綿豆腐を硬めに作って薄く切り、圧搾して水を切り、これを低温と高温の2枚の鍋を用意して揚げたものである」と定義しています。
絶対的な必要条件とされるのは、豆腐の生地の状態よりも大きく膨化していること。そして、表面がからりと、水分が全く含まれていないように揚がり、形がしっかりしていることです。

といっても、わかりにくいですね。端的に言ってしまうと、厚揚げは普通に作った豆腐を厚めに切り、高温で揚げたもので、二度揚げはしません。

対して、油揚げは、膨化(膨らませること)させることがポイントとなります。このため、もととなる豆腐自体も膨化しやすいように作られているようです。また揚げ方も低温の油と高温の油で2度揚げるという方法をとっているとされています。

低温で揚げることで、膨化を促した上で、高温の油で水分を飛ばし、からりと仕上げることができます。

目で見てわかる違いは、断面。厚揚げの断面はつるりとしていますが、油揚げは網目状になっていますよね。

4種類の厚揚げを食べ比べ、厚さはいずれも2cm以上

今回用意したのは、4種類。

  1. 「栃尾油揚げ」(新潟県・栃尾豆庵236円/6.5cm×20cm×3.2cm)
  2. 「谷口屋のおあげ」(福井県・谷口屋570円/12cm×12cm×3.5cm)
  3. 「五箇山平家あげ」(富山県・ねこのくら工房300円/9.5cm×10cm×3.5cm)
  4. 「さんかく油揚げ」(宮城県・ほし食品233円/15cm×9㎝(三角形×2枚)×2.3cm)

※価格はいずれも税込み。大きさは実測に基づくもので、縦×横×厚さ(さんかく油揚げは底辺×高さ×厚さ)。あくまでも目安として考えてください。

1.栃尾の油揚げは、新潟県長岡市栃尾地区で作られる伝統的な油揚げ

「栃尾油揚げ」は、栃尾豆庵の製品。低温と高温の二度揚げによりスポンジ状にふっくらと仕上げています。栃尾の揚げの特徴と言われるのが、揚げたあとに金串を刺し、棚にぶら下げ、油をきる方法です。これにより、余分な油が取り除けるだけでなく、厚みのある状態を維持できるといいます。

油揚げに穴が開いているのは、この金串のあとです。原材料は丸大豆(国産)、植物油、凝固剤(にがり)です。低温でじっくりと揚げることで、外側はカリッと、内側はふっくらと仕上がっています。

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2.谷口屋のおあげは、福井の豊かな自然と伝統的な製法が生み出した油揚げ

「谷口屋のおあげ」は、大正14年創業の老舗豆腐店、谷口屋の製品。福井県と石川県の県境にある竹田村にあることから、福井県民からは「竹田の油揚げ」とも呼ばれているものです。

創業時から変わらぬ技法で、1枚1枚手作業で作られているのが特徴。低い温度から揚げはじめ、火加減を調節しながら、約1時間かけ揚げられているこだわりの品です。原材料は国産大豆100%、食用菜種油、食用ごま油、塩化マグネシウム(にがり)。

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3. 五箇山平家あげ:歴史と自然が育んだ、珠玉の油揚げ

五箇山平家あげは、富山県南砺市五箇山相倉集落で江戸時代から続く伝統的な油揚げです。

「五箇山平家あげ」は、世界遺産に登録された五箇山合掌集落「相倉」から車で5分ほど
の場所に工房を構える「ねこのくら工房」の製品で、手作りです。原材料は丸大豆、食用油、凝固剤。大豆は100%富山県産、食用油としては、昔ながらの圧搾法で作られた「国産なたね油」を使っています。

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4.さんかく油揚げは、香ばしさと旨味が凝縮された、新感覚の油揚げ

「さんかく油揚げ」は宮城県遠田郡にあるほし食品の製品。原材料は丸大豆、食用植物油、凝固剤、消泡剤。さんかく油揚げは、その名の通り三角形の形状をした油揚げです。通常の油揚げとは異なり、厚みがあり、ふっくらとしたフォルムが特徴です。

この独創的な形状は、油揚げ内部に空洞を作り出すことで、熱が均一に行き渡り、ふっくらとジューシーに仕上げることを可能にしています。

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油揚げの萌え断、スポンジ状がポイント

ふわっとした食感を左右するポイントが、膨化状態。ということで、まずは断面を比較してみます。写真は、ちょうど半分になる部分で切ったものです。

「谷口屋のおあげ」(左)と「栃尾油揚げ」(右)
「五箇山平家あげ」(左)と「さんかく油揚げ」(右)

見てわかるように大きく2つに分けられます。上の写真は「谷口屋のおあげ」(左)と「栃尾油揚げ」(右)。下の写真は「五箇山平家あげ」(左)と「さんかく油揚げ」(右)です。

上の2つは全体的に気泡があり、スポンジ状。しっかりと膨化しているのがわかります。下の2つは、中心部がへこんでいて、あまり膨化していません。持つとずっしりとした重さを感じます。

まずは焼きで食べ比べ、香り旨み際立つ「谷口屋のおあげ」

下から順に「谷口屋のおあげ」「栃尾油揚げ」「五箇山平家あげ」「さんかく油揚げ」

食べ比べは焼きと煮物で行ってみました。

それぞれ中心部で半分にし、中心部から3㎝幅に切りそろえたものを用意します。油の風味も楽しみたいので、湯通しはせず、袋から出し、表面を軽くふき取った後、調理しました。焼きは、「谷口屋のおあげ」に示されていたフライパンでの焼き方に従い、電子レンジで1分加熱した後、フライパン(油を敷かない)に並べ、蓋をし、焦げ目がつき皮がぱりっとなるまで、中火で両面焼きました。写真が焼いたものです。

ぱりっふわっとしているのは、やはり「谷口屋のおあげ」、「栃尾油揚げ」の2つ。特に「谷口屋のおあげ」はふわふわっとした食感で、食べた後に口に広がる香りがとてもよく、うまみも強く感じます。「栃尾油揚げ」は、ふわっとした食感と、かみしめたときににじみでてくる豆腐の味のバランスがよいという印象を受けました。「谷口屋のおあげ」は揚げ油にもこだわっており、オーガニックアイランドと言われるカナダ・プリンスエドワード島の菜種油を使っています。香りの高さは大豆というだけでなく、油へのこだわりからも生まれているようです。

断面の密度が高かったのは、「五箇山平家あげ」と「さんかく油揚げ」。いずれも、口に入れ噛んだ瞬間に汁気が出てきます。あまり膨化していない分、食べたときの軽さもありません。特に「五箇山平家あげ」は油揚げというよりは、豆腐を味わっているように感じるほど。「さんかく油揚げ」は、「五箇山平家あげ」に比べると汁気はやや少ない印象ですが、ふわっというよりは、しっとりしています。

煮物なら「五箇山平家あげ」、しっとり柔らか

続いて煮物です。

だしパックでとった出汁300㏄に酒、しょうゆ、みりんを各大さじ1入れたものを鍋で煮立てます。煮立ったところに、焼きと同様3㎝幅に切った油揚げを入れ、煮含めました。断面は写真のとおりです。

上は「谷口屋のおあげ」(左)、「栃尾油揚げ」(右)。下は「五箇山平家あげ」(左)、「さんかく油揚げ」(右)です。

見た印象では、いずれも大きな差はないですが、食感、うまみの感じ方が異なります。「谷口屋のおあげ」「栃尾油揚げ」は、ふんわりとした食感はありますが、食べすすめると、ややぽそぽそした感じが気になります。皮の部分もしっかりとしていて、少し口に残ります。対して、「五箇山平家あげ」「さんかく油揚げ」は、じゅわーっとだしと大豆の旨みがしみだしてきて、しっとりおいしくいただけます。
皮の部分もやわらか。しいて順位づけするならば、やはりしっとり感に優れる「五箇山平家あげ」が適しているように感じます。

油揚げは油もポイント、選ぶ際には油の確認も

一概にどれが一番とは言いにくいというのが結論です。

というのも、食べ方によっても異なるからです。
あくまでも個人的な意見ではありますが、焼いて食べるのが好きな方には、しっかりと膨化していて、ふわっと感が楽しめる「谷口屋のおあげ」、「栃尾油揚げ」がおすすめ。

焼いて食べる場合にポイントになるのは、どのような油を使っているのかです。というのも、油は種類によって酸化の度合いが異なるからです。酸化した油は味やにおい、栄養価に影響を与えるため、湯通しをし、酸化した油を取り除く必要があります。その分、風味も落ちてしまいます。

抗酸化物質を多く含み、熱にも強い、ごま油や菜種油を使ったものは、酸化が遅い分、風味もよく、そのまま食べることができるので、原材料表示やホームページを確認してみるといいかと思います。

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ABOUT ME
蒼井 翠
北海道で生まれ、全国各地で育つ。専門紙で10年超、記者をした後、再び大学へ。食の知識を深めるべく、親子ほど年の離れた学生と学ぶ日々を送る。地域に根付く食、そして、食を支える人々。その思いを届けることが、目下の目標。