日本のローカルフード

兵庫のハバネロ農家秘伝の味、「胡麻辣醤(ゴマラージャン) 」はくせになる旨辛調味料

ハバネロに魅せられた一人の男性。

その男性が、「秘伝の醤」と表現するのが、この胡麻辣醤(ゴマラージャン) です。長い間、家庭の中だけで楽しんできた味を、広く知ってほしいと2016年に製品化したものです。たっぷりと練りこまれた白ごまと、燻煙でいぶされたスモーキーハバネロ。山椒、花椒、八角といった香辛料の豊かな香り。辛いけれど、その辛さが気にならないくらいまろやかで、癖になる味わいです。スティック野菜につけてもよし、ごはんのお供にもよし、炒め物、和え物…。ハバネロという言葉に少し躊躇していた私でも、あっという間に1瓶使いきってしまいました。

無農薬、無化学肥料、丹波篠山で育ったハバネロ

ハバネロの生産、収穫から加工品の製造までを一貫して手掛けるのが、自らをハバネロマンと称す、近藤卓さんです。京都から車で1時間ほど。兵庫県の中東部に位置する兵篠山市で2005年からハバネロを栽培しています。2008年には法人化し、「ターンムファーム」を設立しました。いわずもがなではありますが、ハバネロはメキシコのユカタン半島などで生産される激辛唐辛子。日本国内では、2000年に有限会社篠ファームが国内で初めて商業生産を開始したとされています。

ターンムファームのホームページによると、近藤さんとハバネロの出会いは2002年。友人からもらった1つの実でした。色と形、香水のような豊かな香、フルーティーでやさしい甘み。そのすべてに魅了され、試行錯誤で栽培を開始。種をとり、発芽させ、栽培し、また種をとり、栽培する。これらを繰り返し、1つの実から株数を増やしていったそうです。現在は1800株の規模で生産しています。4月に種をまき、苗を育て、ポットに鉢上げします。6月中旬に苗を畑に植え、9月、実が色づいたものから収穫していきます。これがハバネロの栽培の流れです。1800株は、家族で生産できる最適な規模と、自分の手でできる規模を維持。農薬も化学肥料も一切使わず、土づくりから栽培、収穫、加工、出荷までを家族で担っているんです。

家庭の味を製品化、万能調味料

1瓶100mlの胡麻醤ですが、買ってから1カ月で使い切ってしまいました。いわゆる基本的な調味料以外のものは、好きで買っても使いきれず冷蔵庫の片隅に眠ってしまうこともしばしばの私にとってはかなり異例のこと。それだけ使いやすいのです。何よりもまず言えるのは、そのままでもおいしいということ。材料は醤油、白ごま、なたね油、米酢、甜菜糖、スモークハバネロ、山椒、花椒、八角。ふたを開けた時にわっと押し寄せる山椒、花椒、八角のスパイシーな香り。口に入れたときに感じるほのかな甘みとごまのこっくりとしたうまみ。すっと鼻に抜ける山椒の香りと刺激。そして舌とのどをひりっとさせるハバネロの辛み。そのすべてがちょうどよい加減に配合されています。
料理への応用範囲も広いというのが、もう一つの特徴。中華料理との相性はもちろんですが、胡麻和えの和え衣に少し加えたり、マヨネーズに加えてディップにしたりと和、洋を問わず使えます。ちなみにおすすめの使い方と近藤さんが記すのは水餃子。手製の皮のもちもち食感との相性は「最高」だそうです。

ホットソースもおすすめ

ハバネロのおいしさを堪能したい方には、「Mellow Habanero」のマイルド、エクストラ、ヘブンがおすすめです。トマトやマンゴー、玉ねぎ、米酢、塩などを調合し作られたものです。ハバネロはもちろんですが、玉ねぎ、にんにくはターンムファームが無農薬無化学肥料で育てたもの。トマトやマンゴーは自家製ではないですが、無農薬無化学肥料栽培のものを採用しています。国産米100%の米酢、沖縄産の自然塩と調味料に至るまで、厳選した食材が使われています。
マイルド、エクストラ、ヘブンは材料と材料の配分比率などにより辛さや甘さのバランスが異なります。ハバネロに慣れていない人はマイルドから。ハバネロを思う存分楽しみたい辛党の人は、マイルドに比べ、ハバネロの量が6倍というヘブンをぜひお試しください。

ターンムファームの公式ショップ

ABOUT ME
蒼井 翠
北海道で生まれ、全国各地で育つ。専門紙で10年超、記者をした後、再び大学へ。食の知識を深めるべく、親子ほど年の離れた学生と学ぶ日々を送る。地域に根付く食、そして、食を支える人々。その思いを届けることが、目下の目標。