進化する食卓

-埼玉県- 思わずジャケ買い?!埼玉・日本育ちのイタリア野菜「フィノッキオ」

普段行くスーパーの産直コーナー。初夏を思わせる野菜が並ぶ中で見つけてしまったのが、今回紹介する野菜、「フィノッキオ」です。まず目を引いたのはそのパッケージ。外国人らしき男性を描いたポップなイラストは、簡易な包装が大半の産直コーナーの中で、ひときわ浮いています。袋の中に見えるのは玉ねぎをほうふつさせる、肌の白い、ころっとした野菜。どことなく清楚なそのたたずまいと、ポップなパッケージの対比が面白くて、野菜をジャケット買いしてしまいました。

地中海原産の伝統野菜

「フィノッキオ」という名は耳慣れないですが、「フェンネル」「ウイキョウ」といえば、わかりますよね。特にフェンネルという呼び名は、魚料理によく用いられ「魚のハーブ」とも呼ばれるもので、日本でもなじみがあるのではないでしょうか。実は、「フィノッキオ」はイタリア語、「フェンネル」は英語、そして和名が「ウイキョウ」。すべてセリ科ウイキョウ属の植物の仲間です。その中で、葉を食べるもの、種を食べるもの、根元近くの丸々とした鱗茎を食べるものの3種類があり、日本においては、ハーブとして葉を食べるものを「フェンネル」、野菜として塊根を食べるものを「フィノッキオ」と呼び分けています。

新食材、農家も注目

イタリア野菜である「フィノッキオ」。この野菜の日本での普及を積極的に進めているのが、埼玉県さいたま市に本社をおく、「トキタ種苗」。イタリア野菜を「日本の普通の野菜」にしようと、「グストイタリア」(=イタリアを食べよう、イタリアを楽しもう)プロジェクトを展開しており、その一つにフィノッキオがあります。日本の気候風土に合わせ、同社では品種改良した種苗を販売しており、埼玉のほか、岡山、長野、静岡、岩手、富山県などで生産されています。直売所向けの新商材として、また差別化を図りたい農家からの支持を集めていますが、まだまだ普及の途上にあり、認知度も低いのが現状。同社ではホームページでレシピを載せるなど、食べ方も含めた形で訴求をはかっています。

くせの少ないセロリ?

蒸す、ゆでる、煮る、焼く、揚げる…。調理方法はいろいろとありますが、まずは素材の味を試すために生で食べてみました。セリ科の植物には、セロリや人参があります。いろいろと調べてみると、どうやらセロリのような味が特徴のよう。確かに筋がしっかりと入っているところは、セロリに似ています。根元の巻きはやや強いですが、縦に半分に切った断面をみると、一本一本の茎の感じはやはりセロリ。スライスしてかじってみると、すっと爽やかな香りが広がります。セロリのようなくせは少なく、個人的にはセロリより食べやすい印象を受けました。くせを感じた人におすすめなのは、スープやグラタン。加熱することで、くせを感じにくくなります。料理への応用範囲は広く、洋風の料理だけでなく、南蛮漬けやみそ汁の具といった使い方もあるようです。

ABOUT ME
蒼井 翠
北海道で生まれ、全国各地で育つ。専門紙で10年超、記者をした後、再び大学へ。食の知識を深めるべく、親子ほど年の離れた学生と学ぶ日々を送る。地域に根付く食、そして、食を支える人々。その思いを届けることが、目下の目標。