京都市内にありながらも、のどかな里山の風景が色濃く残る「大原」。三千院、寂光院を始めとした社寺仏閣が観光客に人気の一方、京都三大漬物のひとつ「しば漬」発祥の地でもあります。
梅干しを漬けるための良質な赤しそを求め、収穫が最盛期となる7月上旬に「里の駅大原」を訪れました。
大原の赤しそとは
大原は、京都市中心部から路線バスで40分ほどのところにあります。三千院周辺はお土産物店が軒を連ねる観光地となっていますが、少し離れると日本の原風景とも言うべきのどかな景色が広がります。
7月上旬はまさに赤しその旬。あちこちの畑に収穫を待つ赤しそがフサフサと繁り、近づくとしその香りにふんわりと包まれます。
大原の赤しそはちりめん状に縮れた葉と濃厚な香り、鮮やかな発色が特徴で、主に名産品のしば漬の原料として800年以上昔から栽培され続けているそうです。
シソ科の植物は自然交雑しやすく、通常は長年栽培を繰り返すうちに性質が変わってしまうのですが、大原は周囲を山に囲まれていることにより花粉の飛来が少なく、他品種と交配せず原種に近い性質を保っているのだとか。
また大原は盆地のため、昼夜の寒暖差が大きいことも良質な赤しそを育てるのに適しているといいます。早朝に霧が発生する日も多く、乾燥を嫌う赤しその葉に潤いを与えてくれるそうです。
地元の採れたて野菜が並ぶ「里の駅大原」
赤しそを買うために訪れたのは、「野村別れ」バス停から徒歩5分のところにある「里の駅大原」。
里の駅大原には、産直品販売所の「旬菜市場」、地元のお母さんたちが腕をふるう家庭料理レストラン「花むらさき」があります。また、毎週日曜日の朝6時からは「大原ふれあい朝市」が開催され、新鮮な野菜や大原ならではの加工品などを買い求める大勢の方で賑わうそうです。
旬菜市場には、地元で採れた新鮮な野菜が並びます。同じ種類の野菜でも、生産者ごとに色や大きさ、価格が異なるため、比較しながら選びます。
スーパーマーケットには並ばない珍しい品種や、形はいびつだけれどそのぶん安い野菜が買えるのも魅力です。
赤しそは梅1㎏を漬けられる量を1つの束にして売られていました。朝に収穫したものとのことで、素晴らしいツヤとやみずみずしさです。
里の駅大原に到着したのは平日の午後2時頃でしたが、お目当ての赤しそはなんと残りわずか。ギリギリ購入することができました。
赤しそのシーズンには、梅干しやしそジュースの材料として遠方から買いに来る方も多いそうです。電話による予約も可能なので、早い時間に行けないときやまとまった量が必要なときは予約したほうが良さそうです。
「里の駅大原」で買って帰りたい「しば漬」
旬菜市場では野菜だけでなく、併設された「もちの館」で作られたこだわりの杵つき餅や、地元で作られた加工品も数多く販売されています。
地元特産品のしば漬などの漬物は種類豊富で、土井志ば漬本舗や志ば久といった老舗漬物店の商品も取り扱っています。
そんな中、直売所ならではなのが自家製のしば漬。
もともとしば漬けは、夏に多量に取れた野菜を冬場の保存食とするために、かつては大原の各家庭で作られていたそうです。
現在スーパーマーケット等で売られているしば漬は、酸味のある調味液でなすやきゅうりを漬け込んだ「調味しば漬」がほとんどですが、ここで売られている「生しば漬」は「なす・赤しそ・塩」のみで作られています。
塩で漬けこむと自然に乳酸発酵し、まろやかかつ力強い酸味が生まれます。赤しその華やかな香りと相まって、格別の味わいです。
「里の駅大原」で買った赤しそで梅干しづくり
買って帰った赤しそは、その日のうちに葉を枝から摘んで洗い、塩で揉んでアクを抜きます。塩漬けの梅に加えたら、梅雨が明けるのを待ちます。
梅雨が明け、3日間連続で晴れる日を狙って「土用干し」をおこないます。
今年の梅は、南高梅の他に叶匠寿庵の寿長生の郷で収穫した城州白梅を使いました。
土用干しが終わったら、びんに詰めて味がなじむまで半年ほどおきます。大粒で鮮やかに染まった梅は、見ているだけで食欲が湧いてきます。
梅を漬けこんだ後の赤しそや梅酢も、梅と一緒に土用干しします。
赤しそは、カラカラに乾燥させてからミキサーにかければ自家製のしそふりかけに。梅酢も酢の物や魚の煮物などに無駄なく活用します。
田んぼや野菜の畑の鮮やかな緑と赤しその深い紫のコントラストが見事な大原の景色は、6月下旬から7月下旬のみ目にすることができます。
美しい景色を見た後に買って帰って味わえる。大原の赤しそは心も食卓も豊かにしてくれます。
営業時間 旬菜市場(産直品販売) 9:00〜16:30
花むらさき(レストラン)9:00〜16:00 ※日曜のみ7:30〜16:00
日曜ふれあい朝市 日曜朝6:00〜9:00
定休日 月曜日(祝日の場合は翌火曜)