進化する食卓

たった3ヶ月だけの秋のお楽しみ「京都 くりや」の栗おはぎ

夏の暑さが少し落ち着くと、スーパーや果物屋さんの店頭に、ナシから始まりブドウ、柿、リンゴと旬の果物が次々と並び、移り変わる季節を感じさせてくれます。くいしん坊の私は、おいしいものがたくさんある秋が、一年のうちで最も好きな季節です。

秋の味覚の中でも、とりわけ栗は別格です。そのままゆでてもホクホクと甘くおいしいですが、栗の和菓子の豊かな味わいは、日本に生れた幸せすら感じさせてくれます。
数ある栗のお菓子の中でも、毎年発売を心待ちにしている「京都 くりや」の栗おはぎをご紹介します。

「京都 くりや」は100年以上続く老舗和菓子店です

「京都 くりや」は、世界遺産二条城から歩いて10分ほどの堀川丸太町にあります。
安政2年創業の「元祖 栗納豆 本家 くりや」の分家で、のれん分けしてからも100年以上続く老舗です。
ショーケースに並ぶのは、栗まんじゅうに栗どら焼、栗もなか、栗羊羹とまさに栗づくし!栗好きにとっては天国のようなお店です。

「日本書紀」にも記述がある丹波栗の長い歴史

京都に住んでみるまでは、京都に栗のイメージはありませんでした。
しかし、名産地丹波地方が近いこともあり、栗のお菓子が数多くあるのはもちろん、その専門店も市内に数あります。

現在の京都府と兵庫県にまたがる丹波地方は、栗の生育に気候が適しているため、古くから栗の産地として知られてきました。
奈良時代の歴史書「日本書紀」には丹波栗とみられる記述があり、平安初期に記された「延喜式」にも、朝廷に栗を献上する国として「丹波」の名前が上がっていました。時代が下り江戸時代になると、丹波栗は参勤交代を通じて日本各地に広まっていきます。
朝廷や幕府に献上されていたこともあり、贈答やご祝儀などの格式の高い贈り物として多く使われてきました。

栗おはぎの前にくりや看板商品「金の実」をご紹介します

栗の甘納豆「金の実」は、「本家 くりや」と「京都 くりや」共通の看板商品です。よりすぐった大粒の栗を甘露煮にし、蜜を乾燥して作られています。
一粒ずつ黄金色のフィルムに包まれ、贈答用の木箱にきれいに並べられた様子は、まるで栗の宝石箱!大切な方への贈り物にぴったりです。
自宅で少しだけ楽しみたいという方には、バラ売りもしてくれます。量り売りのため大きさによって値段が違うというのも、栗をそのまま使っているからこそです。

口に入れた瞬間はまさに栗。マロングラッセのようなべたつきはなく、かといって表面が糖で硬くコーティングされているわけでもない、ほろりとした食感。
栗本来の香りと味わいが口の中に広がります。栗の香りが抜けた頃、しっかりとした甘味が遅れてやってくるので、ここでお茶を一口いただくのがおいしい楽しみかたです。

原材料は、栗、砂糖、クチナシ色素のみ。シンプルだからこそ栗の味をしっかり味わえます。賞味期限は10日(夏場は7日)と意外と短いので、おみやげにするときは注意が必要です。

丹波地方の郷土菓子でもある季節限定「栗おはぎ」


栗おはぎとはいただきものとして出会いました。
栗おはぎと聞き、栗が中に入った小豆のおはぎを想像しましたが、袋を開いてびっくり。
そこには小豆の代わりに栗きんとんを使った小ぶりなおはぎが2つ並んでパックに収まっているではないですか!

「こんなの見たことない!」それもそのはず、このような栗おはぎは丹波地方の郷土菓子で、現在は京都市内に本店を移転した「本家 くりや」は丹波地方の園部(現在は南丹市)の創業。栗の産地ならではの贅沢な食べ方です。

期間はたった約3ヶ月!秋にだけ会える「栗おはぎ」


栗おはぎは、一年中買えるわけではありません。

新栗が出回り始める9月10日ごろから、3ヶ月ほどだけ店頭に並ぶ、秋だけの看板商品です。
この間は曜日や数量限定で、京都タカシマヤでも手に入れることができます。他の買い物のついでに気軽に買えるので、この時期にタカシマヤを訪れるとついつい手がのびてしまいます。

丹波栗を丁寧に裏ごしし砂糖だけで仕上げた栗あんでもち米をくるんだ、シンプルで素朴な栗おはぎ。
一口ほおばると、しっとりとした栗きんとんと柔らかなもち米が絶妙にマッチし、栗の香りだけでなくもち米のふくよかな香りも感じられます。
しっかりと味わったあとに口の中に残るのは栗の渋皮の深い味わい。上質な栗の豊かな味と丁寧に作られたなめらかな舌触り、そして小ぶりなサイズも上品な一品です。

おいしくいただけるのは当日中のみ。
だからこその柔らかい食感と優しい甘味が楽しめます。人気商品のため、確実に手に入れるには電話予約をおすすめします。
紅葉シーズン、京都に観光で訪れる際にはぜひ味わってみてください。
口の中から秋を感じられますよ。


秋だけに出会える「栗おはぎ」以外にも、京都には季節限定の和菓子が数多くあります。季節感を大切にし、歴史の中で磨かれてきた和菓子をおいしくいただきながら、その美意識も学んでいけたらと思っています。

ABOUT ME
阿東いつ子
埼玉県出身。 おいしいものが大好きで、農業系の大学を卒業後、食品の研究開発、商品企画、販売と、食べ物から離れられず現在に至る。 結婚を機に京都市に移り住んだものの、いつまでたっても観光客気分が抜けません。