進化する食卓

「きりぼし大根はえらい」は取り寄せて食べたいこだわりのやさしい甘さ

取り寄せてでも食べたい切干大根、こだわりのやさしい甘さ

一瞬、何を食べているのかわからなくなってしまったことってありませんか。自分が思い描いていた味と、いま口の中にあるもの。その味があまりに違っていて、思考が停止してしまうような、そんな経験。この切干大根はそんな経験をわたしにもたらしてくれたものです。何が衝撃だったって、それは、「甘さ」。とにかく食べてみてください。ドライアップルを食べているのではないかと錯覚してしまうくらい、やさしい甘みがあるんです。

1袋になんと大根2本分

左にあるのがごくごく一般的な切干大根、そして右に並べたのが「きりぼし大根はえらい」。長さはあまり変わらないですが、この太さ。一本一本差はありますが、おおむね5mm以上はあります。1袋に詰められた切干大根の重さは100g。生大根で2本分が入っているといいます。この太さ、そして何よりその甘さが「きりぼし大根はえらい」のこだわりなんです。

寒暖差が生み出す甘み

北海道・十勝平野の北西端に位置する鹿追町。約20年前、この町で製品化されたのが
「きりぼし大根はえらい」です。生産するのは、8軒の農家から成る農事組合法人西上経営組合。かつて観光農園を営んでいた際、お土産にと配っていた切干大根が評判をよんだことが製品化のきっかけでした。甘さへのこだわりは、大根を育てる段階から始まります。秋収穫の大根を使うというのが、その一つ。もう一つは、収穫時期を遅らせていること。夏に収穫するよりも秋に収穫する大根の方が甘みは強くなりますが、その甘さをさらに引き出すため、秋の中でも遅めの10月末から11月上旬に収穫をしているのです。昼夜の寒暖差に大根をあてる。これにより、どんどん甘さを増していくといいます。加工段階で太く切るというのも、甘さへのこだわりのため。太くすることで、甘みが感じやすくなり、噛めば噛むほど甘みが広がるという食味が生まれるんです。

惜しみなく手間暇かける

鹿追町の初雪は秋分の日の前後1週間。このため、収穫時期には大根が雪に埋もれているという年もあるといいます。雪が降れば、機械での収穫はできず、一本一本手作業での収穫となり人手が必要となります。また厚みをもたせて切っているため、乾燥には丸1日を要します。乾燥時間が長い分、コストもかかりますが、「こだわりはゆずれない」(西上経営組合)。手間暇を惜しまない一貫した姿勢が、この切干大根の味を支えているのです。

まずはそのまま、おやつ感覚で

「水戻しせずそのまま食べてください」(西上経営組合)。一番甘みがわかるというのが、この食べ方。また水に戻し、そのままドレッシングで和えるのも人気といいます。もちろん、定番の煮物も。その際は、砂糖を入れずにつくるのもおすすめです。切干大根は食物繊維が豊富な食品とされます。100gあたりに含まれる食物繊維21.3g。1回あたりに食べる量は約10gとされているため、2.1gの食物繊維がとれることになります。1回あたりに食べる量で考えると、えのきやエリンギと同じくらいの食物繊維が含まれます。切干大根には、食物繊維の中でもリグニンと呼ばれる不溶性食物繊維が豊富に含まれます。リグニンはガンや動脈硬化の予防に効果的と言われています。また便秘改善にも効くといわれているため、美肌効果も期待できます。おやつ感覚で食べられて、体にもよいとあっては、ついついたくさん食べたくなってしまいますが、食べすぎには要注意。おなかの中で膨れ上がってしまいますので。

ABOUT ME
蒼井 翠
北海道で生まれ、全国各地で育つ。専門紙で10年超、記者をした後、再び大学へ。食の知識を深めるべく、親子ほど年の離れた学生と学ぶ日々を送る。地域に根付く食、そして、食を支える人々。その思いを届けることが、目下の目標。