日本のローカルフード

北海道のきびだんごは丸くない!?岡山との違いは?100年以上続く屯田兵も食べた懐かしの味

きびだんごといえば、岡山県の銘菓と思っていませんか?実は、北海道にもきびだんごがあるんです。岡山のきびだんごが「吉備団子」なら、北海道のきびだんごは「起備団合」。団子と書かないことからもわかるように、このお菓子、団子ではないんです。今回は、北海道民、いわゆる「どさんこ」ならだれでも知っている、懐かしの味「きびだんご」を紹介します。

岡山との違いは?北海道の「きびだんご」とは

「北海道のきびだんご」と聞いた時、「岡山のきびだんご」と何が違うの?と思った人も多いかもしれません。

鬼退治に向かう桃太郎に、おじいさんとおばあさんが作ってくれたのが岡山の「にっぽんいちのきびだんご」。これさえ食べれば十人力と、道中で犬、猿、雉を仲間にする際に与えたものです。にっぽんいちのきびだんごを食べた四人(1人、2匹、1羽?)は「なんびゃくまんりき」の力で鬼を退治します。
福音館の絵本「ももたろう」をみると、桃太郎が腰につけた袋から取り出したきびだんごは、当然のごとく、丸い団子状。

北海道のきびだんごは短冊形で手で持って食べられます


でも、北海道のきびだんごはというと…。幅4cm、長さ14cm、少し厚みのある短冊のような形。主な材料は麦芽水飴、砂糖、もち米、生餡で、「ゆべし」を少し硬くしたような、食感と味わいで、かなりねちっとしています。食感だけを表現するなら森永製菓の「ハイチュウ」に近い印象。オブラートに包まれているので、そのまま手に持ち、かじることができますが、粘度はかなり強いです。岡山県の名物で、桃太郎にでてくる「きびだんご」はもち米や黍粉を使った羽二重のもの。同じ「きびだんご」とはいえ、形も柔らかさも、味も、まったく異なります。

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参考:福音館「ももたろう」文・松居直絵/絵・赤羽末吉

北海道栗山町にある「谷田製菓」が製造

「きびだんご」を作っているのは、北海道栗山町にある「谷田製菓」。大正2年創業の菓子メーカーで、すでに100年を越える歴史をもちます。ちなみに栗山町は、WBC日本代表監督の栗山英樹氏の自宅がある街としても有名です。札幌から東に車で1時間ほど行ったところに位置します。炭鉱の町として知られる夕張市に隣接した町でもあります。
「きびだんご」はそんな谷田製菓の代表的な銘菓で、大正12年に発売されました。北海道開拓の屯田兵が食べていた携帯食が由来とされています。

「きびだんご」命名の理由は震災復興へ助け合いの精神

なぜ「きびだんご」と言うのか。それは、同年に発生した関東大震災が関係しています。北海道の「きびだんご」は漢字で書くと「起備団合」。事が起きる前に備え、団結して助け合うという意味をもちます。北海道開拓の精神を受け継ぐとともに、発売の年に発生した「関東大震災の復興」を願い、命名され、発売されたものなんです。北海道の「きびだんご」は谷田製菓だけでなく、北海道の食品メーカー数社が製造・販売していましたが、今は谷田製菓と天狗堂宝船の2社のみで作られています。

北海道の「きびだんご」は素朴な味わい

昭和23年生まれの私の母も幼い頃食べていたというほど、昔からある駄菓子がきびだんご。今もスーパーの菓子コーナーには必ずといっていいほど並んでいます。今回紹介した「短冊型」のもののほかに、キャンディーのように一口サイズに切り、包まれた製品も作られています。

長く愛される理由は麦芽水飴、砂糖、もち米、生餡というシンプルな材料。今回、母と一緒に食べてみました。小学校以来口にしていなかったというだけに、記憶も薄れてはいるようですが、思い出の味と変わらないと言います。

屯田兵の貴重なエネルギー源だった北海道の「きびだんご」

かつては屯田兵が食べており、発売開始直後には非常食としてのニーズもあったというほど、エネルギー補給源として優れているのも特徴です。1本(70g)あたりの栄養価を計算してみるとエネルギーは246kcal、たんぱく質は1.5g、脂質は0.7g、炭水化物は58.5g。エネルギーだけをみると、ごはんを茶碗に軽く1杯(150g)入れたときとほぼ同じくらいです。効率的にエネルギーを摂れる「きびだんご」は、厳しい寒さの中で開拓にあたる屯田兵の貴重なエネルギー源だったということが想像できます。

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谷田製菓の「きびだんご」は創業から変わらぬ味

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実際、創業以来、製造方法は変わっていません。もち米は石臼で細かく曳き、餅状になるよう蒸します。生餡は十勝産の小豆から作ります。蒸気で温めながら、餅米、生餡、砂糖、水飴を練り合わせ、型に流し入れ、ゆっくりと冷まし固めたのち、一本分の大きさに切り分け、オブラートに包み、さらに包装紙で包みこんだら出来上がりです。包装の作業は、一本一本手作業で行われています。

短冊形になっているのは、片手で食べられるように。今回は切って食べましたが、生地に練りこまれた餡の甘味がほどよく、ほっとする味わいです。固くなった場合には、あたためて食べるとよいそうです。

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ABOUT ME
蒼井 翠
北海道で生まれ、全国各地で育つ。専門紙で10年超、記者をした後、再び大学へ。食の知識を深めるべく、親子ほど年の離れた学生と学ぶ日々を送る。地域に根付く食、そして、食を支える人々。その思いを届けることが、目下の目標。