進化する食卓

-東京都- 伝統のドイツ式製法、大多摩ハムの「無添加ベーコン」

運命的な出会いってあるものなんですね。わたしの出会いは、数カ月前、自宅から歩いて5分のスーパーマーケットでした。決して理想が高いわけではないのですが、やはりゆずれないポイントはあるもので…。これまでなかなか出会えずにいたのです。もっとも重視していたのは、材料。豚バラ肉、食塩、砂糖、香辛料のみ、添加物は一切なしというシンプルさは理想そのもの。もちろん豚バラ肉は国産です。何から何まで理想とぴったりで、いまや我が家になくてはならない存在となってしまった、そんな「ベーコン」を紹介します。

国産豚100%にこだわり

米軍横田基地があり、アメリカに近い町とも言われる東京都福生市。ベーコンの製造を手掛けるのは、1932年創業の「大多摩ハム小林商会」です。大正時代にドイツから教わった製法をそのまま受け継ぎ、国産豚にこだわった製品を作り続けている会社です。東京の地域資源であるブランド豚「TOKYO-X」を使った製品を開発しており、2003年には東京都から「東京地域特産品認証食品」の認定を受けたほか、2017年3月には経済産業大臣から「はばたく中小企業300社」にも選ばれました。

ベーコンやハムといった肉加工品を選ぶ際、わたしが気にしていたのが、食品添加物でした。特にベーコンは、日本でいうところの昆布・カツオにあたる「だし」になるもの。料理の基本になる部分だからこそ、いいものを選びたいという思いがあったからです。国産豚を使っていたり、製法にこだわっていたり。スーパーの陳列棚にはいろんな商品がありますが、原材料名を見ると…。保存料やpH調整剤、酸化防止剤、着色料、発色剤などの言葉が並んでいるものが大半です。細菌やかびの増殖を抑える。保存性を高める。酸化による肉の変色を防ぐなど、それぞれ大切な役割があり、それ自体を否定するものではないのですが、使っていないにこしたことはない。そう思い、探していたときに出会ったのが「大多摩ハム」の無添加ベーコンでした。

加水増量一切しない

大多摩ハムの製法の特徴は、創業者である小林栄次が、大正時代にドイツ人技師から教わった製法をそのまま受け継いでいるという点です。まず1kgの肉から1kg以上のロースハムやベーコンを作らないということ。当たり前のように思ってしまいますが、廉価な量産加工肉の製造では、1kgの肉に、卵たんぱくや乳たんぱく、蛋白加水分解物など肉以外のたんぱくと大量の水により、2kgに増量するといった手法も用いられています。加水をすれば肉の味は薄まります。加水をしないからこそ、肉本来のうまみが生きるのです。もう一つは燻製の方法。ベーコンは山桜のチップを使い、2昼夜直火で燻煙しています。

消費者と作り上げた添加物ゼロ

伝統の製法によるハムやベーコンを販売する一方で、進められてきたのが、無添加への取り組みです。大多摩ハムが守ってきたドイツ式の製法は、低添加ではありましたが、無添加ではなかったためです。消費者から「一切合成添加物を使わない製品」を求める声があがったことから、1972年、消費者と共同で「無添加」製品を開発しました。賞味期限は開封しない状態でも約1週間。保存性という点では劣りますが、油をひかず、フライパンでじっくり焼き上げたときのベーコンの香り。口に入れたときににじみでてくるうまみ。保存性や効率性といったものさしでははかりきれない、大切なものがあるということを教えてくれます。

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ABOUT ME
蒼井 翠
北海道で生まれ、全国各地で育つ。専門紙で10年超、記者をした後、再び大学へ。食の知識を深めるべく、親子ほど年の離れた学生と学ぶ日々を送る。地域に根付く食、そして、食を支える人々。その思いを届けることが、目下の目標。