日本全国、どこを旅しても目にすることができるお漬物。似たような野菜の似たような味のお漬物もあれば、その土地でしか作られていないお漬物もあったりと奥深い食べ物です。今回は近江つけもの「山上」で、おいしい滋賀ならではのお漬物を見つけました。
滋賀の恵みを食卓へ 県内に5店舗展開する 近江つけもの「山上」
近江つけもの「山上」の本店は、滋賀県湖南市にあります。
「三井アウトレットパーク 滋賀竜王」からも近い場所にあり、車で走っていると「近江つけもの 山上」と書かれた大きな看板をいくつも目にしました。
湖南エリアのお隣、近江八幡市にも1店舗、琵琶湖の東側に位置する彦根市には2店舗、琵琶湖の北部にある長浜市にも1店舗あります。
彦根市にある2店舗は彦根城にほど近い場所にあるので、観光のついでに立ち寄ることもできます。
そのうちの1店舗は「近江漬物ばいきんぐ 山上茶寮」で、主に土日のランチタイム限定でバイキングスタイルでお漬物を楽しめます。
近江つけもの「山上」本店は、外観は近江の旧家をイメージした建物で風格があります。
駐車場に車がなく、先に店内に入っていくお客さんがいなかったら、入店するのに怖じ気づいてしまうかもしれません。
実際に店内へ入ってみると、敷居の高さを感じることはなく、店員さんも親しみやすく温かな雰囲気です。
店内には石組みの三段の水槽(かばた)が配され、ゆっくりとお漬物を選ぶことができます。
店内のお漬物には試食が用意されているので、自分の好みの味かどうかを試してから購入できます。
お漬物だけでなく近江牛や鮭、銀だらの味噌漬けや味噌とんなども販売されています。
食べる美容液!? お漬物の知られざる効果とは
お漬物はただのご飯のお供ではありません。
美容と健康に嬉しい効果をたっぷり秘めているのをご存じでしょうか?
お漬物のどんなところが美容や健康にいいのか、あらためて知っておきましょう。
植物性乳酸菌で腸内環境を改善
発酵により植物性乳酸菌を豊富に含んでいるお漬物。
乳酸菌は腸内で善玉菌として働き、腸内環境を整える効果があります。腸内環境が整うと、便秘解消や免疫力向上、美肌効果などが期待できます。
豊富な食物繊維によるデトックス効果
お漬物にたっぷり含まれている不溶性食物繊維が腸内で水分を吸収し、腸のぜん動運動を活発にします。
体内の老廃物や毒素の排出を助け、デトックス効果があると言われています。
ビタミン・ミネラル類の補給
お漬物にはビタミンCやビタミンK、カリウム、カルシウムなど、野菜由来のビタミンやミネラル類が含まれています。
ビタミンやミネラルは健康維持に必要なのはもちろん、美肌効果や抗酸化作用などの美容効果も見込めます。
特に「ぬか漬け」は、米ぬかに含まれるビタミンB群が野菜に移り、生野菜よりもビタミンが多くなるのだそう。モデルやインフルエンサーの方々がぬか漬けを勧めるのを目にしたことがありますが、こういう理由だったのですね。
ただし、お漬物には塩分が含まれているため過剰摂取には要注意!
あくまでバランスの取れた食生活が大前提で、そこへ適量のお漬物をプラスすることでお漬物の美容・健康効果を最大限に活かすことができるのです。
近江の伝統野菜「日野菜」を使った「日野菜姿漬」
「日野菜」は滋賀県が発祥と言われる伝統野菜。
太さは100円玉ほど、長さ30〜40cmと細長く、葉の裏側と根元が鮮やかな紫色をしたカブの一種です。今では近畿地方だけでなく、長野県や新潟県、九州や四国といった広い地域でも栽培されています。
「日野菜」の歴史は長く、室町時代の話が残されています。
自生していた日野菜を漬物にしたところ、桜の花のように美しい色をしたおいしい漬物ができました。あまりのおいしさに公家を通して後柏原天皇に献上され、大変喜ばれた天皇から「近江なる 檜物の里の桜漬け これや小春のしるしなるらむ」と和歌が送られたそうです。
「山上」の契約農園で大切に育てられた「日野菜」は、秋から冬にかけて旬を迎えます。そのため、すらりと美しい日野菜をそのまま丸漬けにした「日野菜姿漬」も冬期限定となっています。
気になるのは「日野菜姿漬」の風味。
淡い赤紫の美しい色とシャキッと心地よい食感、そして日野菜特有のほんのりとしたえぐみを感じます。
えぐみと言ってしまうと印象が良くないかもしれません。軽い苦みのような濃厚なカブの風味で、大根のようなパリッとした食感のほどよい塩気が。
店頭では「日野菜姿漬」だけでなく「日野菜」の糠漬も販売されていました。
並べてみると「日野菜」の糠漬の方が「日野菜姿漬」よりも、ひとまわりかふたまわり小さいように見えます。「日野菜」らしい赤紫色は抜け、全体的に糠の色をしています。
食べてみると「日野菜」独特のえぐみはなくほのかな酸味と甘みがあり、柔らかさのあるコリッとした食感のお漬物です。
野菜も肉も魚も素材を活かして漬けるからますます絶品
近江つけもの「山上」では、「日野菜」の漬物以外にも数多くの漬物が並んでいます。
「日野菜」と並ぶ「山上」の看板商品「白菜大葉重ね」「赤重ね」も人気です。
「白菜大葉重ね」は、白菜の葉を一枚一枚丁寧に離して洗い、一段ごとに並べて塩押しをし何重にも重ねます。さらに間に大葉や大根、昆布やにんじんを挟んだ美しい色合いのお漬物で、それぞれの食感や風味の違いを楽しめます。
「赤重ね」は厚みを調えてそろえた白菜に昆布と大根を挟み、特製の甘辛く濃厚なピリ辛調味液で漬けこんだ和風キムチです。辛みよりも昆布のうまみが引き立つ、あっさりと食べやすい味わいです。
さらに毎日の食卓にあるとうれしい定番のお漬物も揃っています。
「瓜酒粕味噌漬け」や「大根味噌漬け」「だし壬生菜」「下田なすしば」「さくら漬」「しそ大根」「熟成キムチ」「琵琶千舞」などどれも試食をしながらお好みの漬物を選べます。
また「チーズの味噌漬け」「カマンベールチーズの味噌漬け」「赤こんにゃく味噌漬」「こだわりたまごの味噌漬」などお漬物専門店だからこその商品も、試食をしてから買えるので安心です。
期間限定の「近江牛の肉味噌」やレンジでチンするだけで食べられる「焼鮭の味噌漬」など、「近江味噌漬武宗」の商品も取り扱っています。
「近江牛」「味噌とん」「銀だら」といった極上の味噌漬も充実しており、試食の用意はありませんが贈答品にも使える華やかさがあります。
「近江漬物ばいきんぐ 山上茶寮」でゆったりお漬物三昧
彦根城の城下町の雰囲気を味わえる「夢京橋キャッスルロード」には山上金亀城町店があり、散策のついで立ち寄ってお買い物を楽しめます。
2階には近江米のごはんと一緒に20種類以上のお漬物を楽しめる「近江漬物ばいきんぐ 山上茶寮」があり、お漬物好きの方には夢のようなお食事処です。
注意しなければならないのは営業日と営業時間。2024年度は11月25日(月)から冬季休業に入っており、例年どおりだと3月中旬〜下旬に営業を再開すると思われます。山上のホームページやインスタで冬季休業日や営業開始日についてお知らせしていますので、お出かけの際は必ずチェックしてから行くことを強くおすすめします。
営業日は土日祝のみ、営業時間は11:30~14:30(最終入店13:30)です(2025年1月現在)。
営業日も営業時間も限られていることから、「近江漬物ばいきんぐ 山上茶寮」でのランチをメインにして旅の日程を組まないとなかなか行きにくいかもしれません。
【 茶寮ばいきんぐの料金(2025年1月現在) 】
- 大人 1,700円(税込)
- 小学生 1,000円(税込)
- 4歳以上 500円(税込) ※3歳以下は無料
【 茶寮ばいきんぐのメニュー 】
- 近江漬物(約20種類)
- 近江米(白米、お粥)
- 近江の味噌汁
- 近江茶
- デザート
自分のペースで好きなものを好きなだけ選べるのがセルフサービスのバイキングの魅力。約20種類のお漬物を食べられる機会はなかなかないので、ちょっとずつ全種類食べたくなります。
自分好みのお漬物を探したり、初めて食べるお漬物を試してみたり。季節限定のお漬物や山上茶寮専用の商品もあるので、飽きることなく食べられます。近江米のご飯は白米だけでなくお粥も用意されており、冬は出汁茶漬け、夏は冷し出汁茶漬けも楽しめます。
面白いのはお味噌汁。
もなかの皮にスプーン1杯ほどの味噌を入れて挟んだら、お好みでねぎ味噌やみぶなを加えても。お椀にもなかを入れてお湯を注げばできあがり。普段お味噌汁を飲まない方でも、こういうちょっと変わったお味噌汁なら飲んでみたくなりますよね。
専用もなかに柚子シロップ漬けや柚子あんを挟んで食べるデザートも絶品。
爽やかな柚子の風味とサクサクッと軽い食感のもなかが後を引きます。クラッカーも用意されているので、食べ比べてもおもしろいです。
抹茶あんや和三盆チーズが用意されていることもあり、「抹茶あん×柚子あん」「和三盆チーズ×柚子シロップ漬け」など2種類だけでなく3種類を組み合わせても。予想以上に子どもたちのウケが良く、もなかを作っては食べ、また作って…とお漬物以上に大好評でした。
「近江漬物ばいきんぐ 山上茶寮」で使われている器は、近江の伝統陶芸品「下田焼」です。白地に「呉須(ごす)」と呼ばれる美しい藍色の絵付けが特徴で、素朴さと上品さを併せ持った割れにくく丈夫なやきものです。
江戸時代中頃、現在の湖南市下田に住む村人が陶芸に適した土を近隣の山で発見したことから始まったとされる下田焼。明治時代初期までの最盛期には12軒以上あった窯元も、機械化によって大量生産ができるようになると徐々に廃窯が相次ぎました。平成元(1989)年には、最後の1軒だった陶工が亡くなり途絶えてしまいました。
下田焼を愛用する方々の後押しや湖南市甲西町の要請もあり、作陶活動を続けていた弟子の小迫一氏が再興の準備に入ります。そして5年ぶりとなる平成6(1994)年、再び窯に火が入り、師匠が亡くなる前に教わったという代々伝わる「呉須」の色合いを持つ下田焼が復活したのです。
そんな「下田焼」の歴史を知った上で味わう漬物バイキングは、ますます味わい深いものになった気がします。
「近江漬物ばいきんぐ 山上茶寮」で食べて気に入ったお漬物は、1階の山上金亀城町店でお土産に買って帰ることもできます。たかがお漬け物と侮ることなかれ、とっておきのごちそうを味わえます。
近江つけもの 山上